柔道・渡名喜風南、苦手なビロティドも撃破で金メダルへ期待。「プレッシャーもないし、他人の評価も気にならない」 (3ページ目)
女子48キロ級には、近藤亜美という絶対的な存在がいた。同年齢で高3のインターハイから競い合い、リオ五輪48キロ級で銅メダルを獲得するなど、この階級屈指の強敵である。東京五輪を目指すためには、乗り越えないといけない相手だった。
「常に追い続けてきた存在ですし、近藤選手を越えないと五輪はないと思っていました。自分にとっては、すごく大きな存在です」
負けてはいたが、渡名喜は苦手意識がまったくなかった。むしろ戦うのには「得意な選手」という感触を得ていた。
「自分は、相手と組んだ時、得意な選手、苦手な選手というのがわかるんです。苦手な選手は、守りに入ってしまうことが多くて、そうなると投げられてしまうんですけど、逆に攻めに徹底できれば、勝てます。近藤選手には積極的に攻めることができたので得意な選手に入ります」
渡名喜は、試合中、よくゾーンに入るという。ゾーンというのは極度の集中状態で、相手との戦いのみに専心する状態のことである。よくアスリートが使う言葉だが、戦いに集中し、周囲の声がまったく聞こえなくなることだ。
「コーチの言葉とか、試合に勝つための言葉は耳に入ってくるんですけど、それ以外の周囲の声は、入ってこないですね。しかも、試合中はぜんぜん疲れないんです」
東京五輪の枠をかけて戦った2019年のグランドスラム大阪、準決勝で渡名喜は、ゾーンの状態に入って近藤と対戦。両者譲らない互角の戦いの中、渡名喜が反則勝ちをし、そのまま優勝まで突っ走った。そうして翌2020年2月、東京五輪女子48キロ級の代表内定を勝ち取ったのである。
「東京五輪の代表に内定するまでは、長くもあり、短くもありという感じですね。でも、相手が日本人、外国人に関係なく、安定して試合に勝ち続けることがすごく難しかったです。勝ち続けないと五輪の代表に選ばれないので」
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