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「人間山脈」「インドの狂える虎」...外国人レスラーを際立てた言葉の力 (2ページ目)

  • 松岡健治●取材・文 text by Matsuoka Kenji
  • photo by Kimura Sankei Visual

 もちろん桜井氏の類まれなる語彙力があってこそだが、1980年代に入るとさらなる才能が出現する。舟橋氏のあとに『ワールドプロレスリング』のメイン実況を担当した古舘伊知郎氏だ。

 古舘氏は1977年にテレビ朝日に入社し、同年の夏にプロレス実況アナとしてデビューした。舟橋氏は、新人アナの古舘に「絶対に人のマネはするなよ。ただし、どこかでヒントを得たものは吸収して、独自に言葉を考えてどんどん使え」とアドバイスしたという。

 すると古舘氏は、アンドレ・ザ・ジャイアントの「人間山脈」という異名を生み出す。さらに実況では「ひとり民族大移動」と、身長223cmのアンドレをズバリ表現するなど、キャッチーなフレーズを速射砲のようにお茶の間に届けた。ほかにも、「超人」という異名があったハルク・ホーガンの彫刻のような筋肉美を「現代に甦ったネプチューン」と表現。古舘氏は「異名」だけでなく、実況での「フレーズ」でもレスラーのイメージを膨らませた。

 さらにマスコミは、選手の技も命名していた。前出の舟橋氏は、ハンセンの必殺技「ウエスタンラリアット」の名づけ親だという。

「ラリアットという技は、ハンセンが登場する前からロサンゼルス地区でよく使われていたんです。僕は、カウボーイスタイルで登場するハンセンが放つラリアットだから、カウボーイの西部劇をイメージして『ウエスタン』をその上につけたんですよ」

 さらに日本人レスラーの技では、1978年1月に藤波辰巳(現:辰爾)がニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで初めて披露したスープレックスを、「ドラゴン・スープレックス」と呼んだ。

「あの時は試合前に、ニューヨークのカフェで藤波と団体のスタッフ、マスコミの何人かとお茶を飲んだんです。藤波に『何か新しい技をやるの?』と聞くと、『スープレックスを考えています』と答えたんですよ。

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