37歳の料理人ボクサーの世界戦。
「このくらいなら」の強気が勝敗に響く (3ページ目)
「どっちの結果であっても、(進退について)ここではっきり明言はしないようにしようと思っていた。好きだし、やりたいという気持ちはありますけど、ボクシングっていつかは終わるじゃないですか。僕は挑戦するのも好きなんで、また何かに挑戦していきたいという気持ちはあります。それが何なのかはわからないですけど」
ドグボエ戦後、大竹はさっぱりしたような表情でそう述べた。初挑戦から4年をかけて辿り着いた2度目のチャンスも実らなかったのだから、進退が問われるのは当然。大竹は「これで終わりかどうかは今は話せない」とつけ加えたが、その表情にはひと区切りの落ち着きが感じられたのも事実である。
試合直後のボクサーが敗戦の真の重みを理解するのは簡単ではなく、少し冷静になった後、敵地での再挑戦が1回も持たずに終わった悔恨に苛(さいな)まれるのかもしれない。「一生懸命やってきたことを、もう少しリング上で出させてあげたかった」という金子健太郎会長の言葉は、正直な思いの吐露だったに違いない。
ただ・・・・・・同階級で世界のトップに挑み、接近戦という自らの土俵で戦い、キャリア初のKO負けを喫したのだから、本人、陣営ともにある程度は納得できるのではないだろうか。
「日本人として最高齢で世界を奪るっていう記録にみんなでチャレンジした。本人が『またやる』と言えば我々は全面的に応援するし、『これでボクシングはいい』ってことになれば『本当にご苦労さん』って言ってあげたい」
金子会長がそんな心のこもった言葉で締めくくり、試合後のロッカールームでの会見は終わった。瞬く間のKO劇はボクシングではよくあることで、それで積み上げてきたすべてが吹き飛ぶわけではない。望んだ結果は得られなくとも、ここまでのプロセスに間違いはなかった。そう感じられたがゆえに、終了後の後味は決して悪くなかった。
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