37歳の料理人ボクサーの世界戦。
「このくらいなら」の強気が勝敗に響く (2ページ目)
23歳のスター候補と、日本史上最年長での王座奪取を狙った37歳のチャレンジャーの実力差は歴然。才能、若さで上回るドグボエにスタミナ切れの心配もないとすれば、勝機を見出すのは難しかった。結果がすべてのプロボクシングで、今戦は"ミスマッチ"と酷評されても仕方なかったのだろう。
しかし、たとえそうだとしても、異国で"ジャイアントキリング"を目指した大竹の挑戦に価値がなかったとは思わない。
「すごいパフォーマンスが見せられた。今回の機会が得られたことに感謝している。ダウン後に立ち上がってきた大竹のことはリスペクトするよ」
試合後、そんな余裕のコメントを残したドグボエには"新星の輝き"が確実に感じられた。過去3戦では、セサール・ファレス(メキシコ)、マグダレノ、大竹をすべてハイライトシーン満載のKOで撃破。6階級制覇を目標に掲げる通称"ロイヤル・ストーム"の行方には、紛れもなく明るい未来が広がっている。こんな好選手に挑んだのだから、大竹も完敗を恥じる必要はない。
2014年に当時のWBA世界スーパーバンタム級王者スコット・クイッグ(イギリス)に挑戦し、大差の判定負けを喫した大竹は、その後に引退を考えたという。しかし33歳にして、トレーニング環境を考え直すことを条件に再起。横浜市内の飲食店で料理人として働きながら、再起以降は9連勝を飾って東洋太平洋タイトルを獲得し、同王座を2度も防衛した。
挑戦資格に問題があったとは思わない。ただ、今回は相手が悪かったというだけのこと。1998年にマニー・パッキャオ(フィリピン)に初回KO負けした寺尾新(八王子中屋)、2012、13年にそれぞれゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)に倒された淵上誠(八王子中屋)、石田順裕(グリーンツダ)と同じように、大竹もいつか"あのドグボアと戦った選手"として注目をされるかもしれない。
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