リングを去る心優しき王者・内山高志。
笑ってさよなら、涙はいらない (9ページ目)
まごうことなき稀代のスーパーチャンピオンは、会見の最後に名言を残すことも、会場に詰めかけた記者たちを涙させることもできただろう。
しかし、心優しきハードパンチャーは、そうはしなかった。会見場が、しみったれた空気になりそうなのを察したか、最後の質問で今後について聞かれると、笑いながらこう答えた。
「とりあえず、のんびりと猫カフェでもやろうかと(笑)」
誰よりも笑顔と、KOと、チャンピオンベルトが似合う男がリングを去った。
笑ってさよなら。涙はいらない。
内山高志が刻んだ記録も、記憶も、簡単に消せはしない。それどころか、チャンピオンが何よりも大切にしたファンの胸のなかに、その豪拳の残像は永遠に残るはずだから......。
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