【国際プロレス伝】アントニオ猪木が一度だけアニマル浜口を褒めたこと (5ページ目)

  • 宮崎俊哉●取材・文 text by Miyazaki Toshiya
  • photo by AFLO

 敵をビビらせ、震え上がらせ、戦意さえも喪失させる力のある眼。リングに上がった者すべて、この世のすべてさえも制圧する眼。国際軍団は、あの"眼"と戦い続けなければならない。浜口道場の壁には、『敵を睨みつけろ! 一点集中!』と書かれていますが、まさに眼の力なんです。

 プロレスラーというのは、パワー、スタミナ、馬力がなければ始まりませんが、スター選手となるにはそれだけでは足りない。キラリと光り輝く、個性と華がなくてはならない。アントニオ猪木という偉大なレスラーには、それがすべて備わっていた。だからこそプロレスファンはもちろん、子どもたちからも女性からも絶大な人気を博している。それがわかったんです。

 そんな猪木さんから、一度だけ認められたことがあるんです。といっても、直接ではなく、ある新聞記者から聞いた話ですが。

 ある日の試合前、猪木さんは新日本プロレスの選手を全員集めて檄(げき)を飛ばしたそうです。『俺はもう我慢がならない。お前らは俺と一緒にいながら何も盗んでない。アニマル浜口を見習え! アイツは俺の弟子でもなければ、新日の選手でもない。それなのに、俺が持っているものをみんな盗みやがった』

 うれしかったですね。猪木さんというのは、実によく人のことを見ている方だと思っていましたが、まさか自分のところに殴り込んできた人間のことまで見ていたとは......。あの時代の、いい思い出です」

(つづく)
【連載】アニマル浜口が語る「国際プロレスとはなんだ?」

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