悪夢の「ロマゴン敗戦」で誤算。井上尚弥の世界進出プランを再考する (5ページ目)

  • 水野光博●文 text by Mizuno Mitsuhiro
  • photo by AFLO

 しかし、いくらタラレバをこねくり回しても、無敗のままのロマゴンとの一戦以上に、井上の胸を高鳴らせる試合はないように思えてならない。

 ならば、青春の蹉跌(さてつ)と奥歯を噛み締め、井上には前を、上を向いて、その歩を進めてほしい。幸運にも、井上は23歳と若い。理不尽を乗り越えてこそカタルシスは生まれる。

 きっとロマゴンが敗れた試合を自ら解説したのは、神が現実を直視させるために与えた試練。もしくは「一歩ずつ階段を登れ」という啓示ではないか。有名な映画俳優兼監督が言ったように、「人生はクローズアップで見れば悲劇。ロングショットで見れば喜劇」だ。いつか、ロマゴンが負けた試合の解説をしたことを笑える日が来るはず。

「最強」の称号を手に入れるのは、今年でなくていい。

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