悪夢の「ロマゴン敗戦」で誤算。井上尚弥の世界進出プランを再考する (3ページ目)

  • 水野光博●文 text by Mizuno Mitsuhiro
  • photo by AFLO

 こうなると心配されるのが、井上のモチベーションではないだろうか。

 ボクサー、特に世界チャンピオンは、戦うために高濃度のモチベーションを必要とする。「モンスターレフト」と呼ばれた元世界チャンピオンの西岡利晃は、以前、その理由をこう教えてくれた。

「ボクサーなら、誰もが世界チャンピオンを目指す。最初から防衛回数や複数階級制覇を目標にするボクサーはいない。そして、本当に世界チャンピオンになって目標を達成したとき、改めて新たな目標を設定してモチベーションを維持しなければいけない。僕は、チャンピオンになって以降は『ボクシングを極める』ということをモチベーションにしていました」

 西岡のように戦う理由を自身の内側に求めた者もいれば、内山高志(元WBA世界スーパーフェザー級スーパー王者)のように、モチベーションを外側に求めた者もいる。

「自分がどれだけ強いか試したい。それがモチベーションです。『ドラゴンボール』で言ったら、天下一武道会みたいなものですね」

 また、3階級王者の長谷川穂積が2010年にWBC世界フェザー級王座に挑んだ際のモチベーションは、亡き母に勝利を捧げるためだった。

 では、「パウンド・フォー・パウンドのロマゴンを倒す」という目標を失った今、井上はどうモチベーションを維持すればいいのか?

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