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伊調馨が語るリオ五輪の裏側。
「4試合とも最低、全部やり直したい」 (5ページ目)

  • 宮崎俊哉●取材・文 text by Miyazaki Toshiya
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

photo by Sano Mikiphoto by Sano Miki 1月29日、ロシアで開催されたヤリギン国際大会で、まさかの0-10テクニカルフォール負け。負傷による棄権をのぞけば、実に13年ぶりの敗戦で始まったオリンピックイヤーだった。自ら「集大成」と位置づけて挑んだリオでオリンピック4連覇という金字塔を打ち立て、国民栄誉賞を獲得した2016年を、伊調は自ら「とっても成長できた年」と評した。

「負けることも経験した。そのとき、自分は本当に多くの人に支えられているんだなと改めて感じて、人とのつながりに感謝しました。

 でも、淋しさもありますね。この1年というか、2015年の世界選手権で自分がオリンピック出場権を獲得できたころから。オリンピックの前はいつもそうですけど、その予選を兼ねた世界選手権で、勝者と敗者が分けられる。一緒にオリンピックを目指してがんばってきたけど、負けて夢が絶たれて(オリンピックに)行けない人を見ると、過酷な世界だなと思い知らされます。

 私はアテネ、北京まで一緒に戦ってきた正田絢子さんというライバルがいたから、強くなることができたんです。正田さんはオリンピックに行きたかったけど、行けなかった。でも、今でも仲良くしてもらっているのは、ともに夢に向かって戦ってきたから。私はそういう人たちの想い、負けたときに自分以上に悔しがってくれた方たちの想いを背負ってリオで戦った。そして今、レスリング以外でも多くの人と接することができて......。だから、今年は成長したかな」

(後編に続く)


【profile】
伊調馨(いちょう・かおり)
1984年6月13日生まれ、青森県八戸市出身。中京女子大学(現・至学館大学)卒。ALSOK所属。2004年アテネ、2008年北京、2012年ロンドン、2016年リオデジャネイロで金メダルを獲得し、女子史上初の五輪4連覇を達成する。世界選手権10回優勝。2016年10月、日本政府から国民栄誉賞を授与される。共著に『一日一日、強くなる~伊調馨の「壁を乗り越える」言葉』(講談社+α新書)

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