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伊調馨の目にも涙。姉も案じた
「4連覇・年齢・母」の葛藤を超えて (3ページ目)

  • 宮崎俊哉●取材・文 text by Miyazaki Toshiya
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

終了間際に相手からポイントを奪って逆転勝利を飾った登坂絵莉終了間際に相手からポイントを奪って逆転勝利を飾った登坂絵莉 第1試合、アフリカ選手権を8度制覇したマルワ・アマリ(チュニジア)には格の違いを見せつけるように、11-0のテクニカルフォール勝ち。続く第2試合は、間合いを詰めて組むことに徹してきたエリフ・ジャレ・エシリルマク(トルコ)に攻めあぐねながらも、3-1の判定勝ちで危なげなし。そして準決勝でも、ロンドン五輪55キロ級・銅メダリストのユリア・ラトケビッチ(アゼルバイジャン)に10-0のテクニカルフォール勝ちを収めた伊調は、ほぼ金メダルを手にしたかと思われた。

 ところが決勝戦は、予想外の大苦戦となった。相手は、北京五輪前に吉田沙保里の連勝記録をストップさせ、その名を世界に轟(とどろ)かせたワレリア・ジョロボワ(ロシア)。2014年の世界選手権・決勝で伊調がテクニカルフォール勝ちしている相手とはいえ、第1ピリオドはプレッシャーからか身体が動かずに1-2とリードを奪われると、第2ピリオドも攻め込めぬまま、時間だけが過ぎていった。

「第2ピリオド後半、カオリンの試合で初めて、『もしかして、負けるのかも......』と、最悪の事態が頭をよぎりました」

 姉の千春は、そう思ったという。

 だが、"絶対女王"は最後に力を振り絞った。試合終了間際、タックルに入ってきた相手を「最後のチャンス」と思って攻め、バックを取って2点を奪取。見事、3-2で劇的な逆転勝利を遂げた。

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