伊調馨の目にも涙。姉も案じた
「4連覇・年齢・母」の葛藤を超えて
「大逆転!」「大逆転!」「大逆転!」の3連続金メダル!
日本レスリング女子は、まさに"神って"いた。48キロ級・登坂絵莉(とうさか・えり)、58キロ級・伊調馨(いちょう・かおり)、そして69キロ級・土性沙羅(どしょう・さら)がそろってオリンピック制覇。伊調は「日本史上初」「レスリング史上初」「女子史上初」となるオリンピック4連覇の偉業を成し遂げ、登坂と土性はオリンピック初出場・初優勝を飾った。
決勝終了後、伊調馨は姉の千春と握手を交わしながら涙を流した リオに向けて成田空港を出発する前、伊調は「平常心で臨みたい」と語っていた。レスリングでは試合中、シングレット(レスリングのユニフォーム)のなかに白いハンカチを入れておかなければならないが、3歳から中学卒業までレスリングの基礎を叩き込まれ、今も父のように慕って尊敬する恩師・澤内和興(かずおき)氏から試合前に贈られた白いハンカチにも、「平常心」と書かれていた。
今回のリオ五輪へ向けて伊調は、当時20歳でイケイケだったアテネ五輪、「姉妹・同時金メダル」を目指した北京五輪、そしてレスリングの真髄を極める決意で挑んだロンドン五輪とは、まったく違った道のりを歩んできた。本人いわく、「積み重ねた重み」も違っていた。だからこそ、自らに言い聞かせたのは、「平常心」だった。
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