【柔道】メダルを逃した福見友子が試合後にもらした『悔恨の言葉』 (2ページ目)

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • photo by JMPA

 これまで女子48キロ級は谷が5大会連続で出場し、金2、銀2、銅1を獲得してきた看板階級である。男子60キロ級とともに大会初日に行なわれるため、後に続く日本選手団に勢いをつけるという意味でも、重責を担っている。

 準決勝の相手ドゥミトルは、福見が真の谷越えを果たす意味でも、そして日本女子柔道界が新時代を迎えるためにも、絶対に勝たねばならない相手だった。

 しかし、先に指導1が宣告され、さらに大外刈りを仕掛けたところを返されて技有りを奪われる。その後、守勢に入ったドゥミトルに指導2が与えられたが、ポイントでリードされたまま試合は終了した。

 帰国後、メダルに届かなかった福見が表立って発言する機会はほとんどない。集大成としていた五輪が終わっても心の整理がつかず、進退を決断するには至っていない。福見の悩める胸中を、所属先の了徳寺学園・山田利彦監督が代弁してくれた。

「ドゥミトルはもちろん警戒してはいましたが、福見はこれまで3度勝っているんです。しかし、先に指導を取られてしまい、少し焦ってしまった。強引に技をかけたところを返されてしまった。金メダルが獲れず、『浅見を出した方が良かった』などという批判も受けました。でも本人が言い訳することはいっさいありません」

 ロンドンで福見は、燃え尽きることができたのか――。

「そこはやはり悔いる気持ちが強い。今はその一点を自問自答しているんじゃないでしょうか。引退するか、現役を続けるか決めるのは、時間がかかっても仕方ないと思います。私も彼女の決断を静かに待ちたいと思います」

 8月中旬、福見は国民体育大会の関東ブロック大会の柔道会場に姿を現し、ロンドンで付き人をしてくれた後輩の試合に付き添っていたという。

 メダリストたちが脚光を浴びる中、福見は静かに、ロンドンの地で背負った悔恨の思いと戦っている。

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