【ボクシング】ドネア戦を前に西岡利晃、誓いの言葉「家族のためならいつでも死ねる」

  • 水野光博●文 text by Mizuno Mitsuhiro
  • 大村克巳●撮影 photo by Ohmura Katsumi

日本人初の『名誉王者』に認定された西岡利晃が、ついに待望のノニト・ドネアと拳を交える日本人初の『名誉王者』に認定された西岡利晃が、ついに待望のノニト・ドネアと拳を交える「左はもらわない。絶対に」

 10月13日にアメリカ・カリフォルニア州カーソンで行なわれる、WBO・IBF王者ノニト・ドネア(フィリピン)との世界スーパーバンタム級王座統一戦を前に、WBC名誉王者の西岡利晃は、揺るぎない自信を垣間見せた。

 ドネアが放つ左――。それは、ただの左ではない。『フィリピンの閃光』の異名を持つ男は、その左拳で、ベルトも名誉も栄光も、すべてを掴み取ってきた。

 2007年、ドネアは当時28連勝中で『猛牛』と呼ばれるビック・ダルチニアン(オーストラリア)を5ラウンド、左フック一発でマットに沈め、IBF世界フライ級王座を手にする。そして2011年には、長谷川穂積の11度目の防衛を阻んだフェルナンド・モンティエル(メキシコ)を2ラウンド、カウンターの左フックで葬り去り、メジャー4団体(WBA、WBC、IBF、WBO)すべてで世界王座獲得に成功。さらに上記2試合は、ボクシング界で最も歴史と権威のある雑誌『リングマガジン』のノックアウト・オブ・ザ・イヤーに選ばれている。通算2度の同賞受賞は、1990年代最強のヘビー級ボクサーのひとり、KO率78%を誇ったレノックス・ルイス(イギリス)以来ふたり目の快挙だ。

 一見、大振りに見えるその左フックを、西岡が所属する帝拳ジムの浜田剛史氏も「普通の選手のショートパンチ並みの速さ」と警戒する。それでも、西岡は断言した。

「一番危険なのが左フックと左アッパーというだけで、すべてのパンチが危険。ただ、絶対にもらわないだけの練習を積んできた」

 今年、36歳となった西岡は、実現する可能性は低いとされながらも、対戦決定以前からドネア対策を行なってきた。

「36歳。びびる数字ですね。いつも乗っている体重計に年齢が出るんですけど、自分でも『えー』って思いますから。でも、衰えは感じない。ごまかしがきかない世界だから、弱くなったと思ったら、もうリングに上がれないです」

 ボクサーとして残された時間は長くない。それでも、1年ものブランクを作ってまで西岡は、他の誰でもなくドネアとの対戦を熱望した。

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