【ボクシング】ドネア戦を前に西岡利晃、誓いの言葉「家族のためならいつでも死ねる」 (2ページ目)

  • 水野光博●文 text by Mizuno Mitsuhiro
  • 大村克巳●撮影 photo by Ohmura Katsumi

「たとえドネア以外の誰かに勝ったとしても、結局は、その上にドネアがいる。だったら、直接やったほうがいい。だって、一番強いヤツを倒せたら最高でしょ」

 前述した『リングマガジン』は毎月、ボクサーのランキングを選定し、その中で『パウンド・フォー・パウンド』......つまり、もしも体重差がなく、全階級のボクサーが同じ体重で戦った場合、誰が一番強いのかをランキングしている。現在、そのランキング1位は空位。2位には世界6階級制覇王者のマニー・パッキャオ(フィリピン)、現WBC世界スーパーウェルター級ダイヤモンド王者などの座に着くフロイド・メイウェザー・ジュニア(アメリカ)の名が並ぶ。そして、軽量級ボクサーの中で1位、全体で5位に位置するのが、ドネアだ。つまり、この一戦は、世界最強のスーパーバンタムを決める以上の価値――『軽量級のパウンド・フォー・パウンド決定戦』という意味合いを持つ。だから、西岡は言う。

「頂上決戦です」

 また、それに相応しい4本ものベルトが、この一戦にかけられる。前述したパッキャオ、メイウェザー・ジュニア、そして現WBC世界ミドル級王者のセルヒオ・マルチネス(アルゼンチン)、さらに史上初めて主要4団体の王座を統一した元ミドル級世界王者バーナード・ホプキンス(アメリカ)、彼ら4人の稀代のチャンピオンしか腰に巻いたことのないWBCダイヤモンドベルトをはじめ、ドネアの持つWBO・IBFのベルト、そしてリングマガジンベルト――。計4本のベルトが、この試合の勝者のものとなる。

 この世紀の一戦について、「俺が一番、楽しみにしています」と、西岡は少年のように微笑む。そして、「その先はまだ考えていません」と前置きしながらも、「この試合にすべてを賭けます。捨て身です」と言葉を続けた。

 以前、西岡は世界戦に挑む際、「試されるのは、勇気だ」と語っている。

「パンチの当たる位置で打つということは、相手のパンチをもらうリスクを背負うわけです。もちろん、怖い。それでも打つ。『なにがなんでも(パンチを)当てるんだ』と。それが『勇気』です」

 そして、西岡は「勇気と無謀は、まったく異なる」と付け加えた。「できる準備をすべてやった上での勇気、捨て身です」と。

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