【男子バレー】甲斐孝太郎が辿り着いたリリーフサーバーの境地「流れを持ってくるのが面白い」 (2ページ目)
【リリーフサーバーを極めたその先】
小・中・高、大学とずっとスパイクを託されてきた選手なだけに、リリーフサーバーは難しさもあったはずだが、不満などおくびにも出さない。
そこで意地悪く、質問した。
――同じオポジットのライバル、(ドミトリー・)ムセルスキー選手とのポジション争い、彼に嫉妬したりしなかったんですか?
すると彼は、明るく笑って答えた。
「ムセルスキーは大きな存在で、なかなか勝てないとは思っています。そんななかで自分はチームにどう貢献するか。そこに気持ちは向いています」
シーズンを通じ、その専心があったからこそ、リリーフサーバーとしてひとつの境地に辿り着けたのだろう。
「自分にとってのベストゲームは......シーズン最後のアジアチャンピオンズリーグ準決勝(アル・ラーヤン戦)ですかね。1セット目のセットポイントを自分のサーブで取ることができました。勝てば世界クラブ選手権に行ける試合で、積み上げたものを出せた。結局、試合は(フルセットの末に)負けましたけど、個人的に次のシーズンにつながる試合だったと思っています」
甲斐は言葉に熱を込めた。その充実感を手がかりに、新シーズンに挑む。きっと彼はどの立場でも、それを繰り返してきたのだろう。鍛錬と上達が、彼のバレー人生を形成している。
「(チームメイトの髙橋)塁さんとは、お互いにリリーフサーバーだったんで、いろいろ話しましたね。試合を見ながら、『もうちょっと思いきり打ったほうがいいかも』『トスはこうしたほうがいいかも』って。リリーフサーバー独特の難しさは、ふたりともわかっているので」
甲斐は少しずつサーブを練り上げてきた。左利き特有の振り下ろすサーブは、独特な回転がかかる。それは大きな武器だ。
「去年までオポジットは3人でしたが、今年は2人になったので、ひとりが欠けると穴を埋めないといけない。だから、まず自分に求められているのはケガをしないこと。あとは、サーブの効果率を上げていきたいです」
甲斐は訥々(とつとつ)と言うが、リリーフサーバーとして信頼を揺るぎないものにしたあと、その世界は広がるはずだ。
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