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【SVリーグ女子】佐藤淑乃の涙 今季とファイナルを振り返り「これからも成長できる」

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 5月3日、有明アリーナ。SVリーグチャンピオンシップ決勝、NECレッドロケッツ川崎は、大阪マーヴェラスに初戦セットカウント0-3、第2戦0-3と連敗を喫し、女王の座を逃している。控えめに言って、完敗だった。

「とにかくボールを落とさない」

 マーヴェラスの"不落"は、揺るぎない牙城だった。サーブで崩し、高いブロックがそびえ、剛柔のスパイクが襲う。常に先手を取ってきた。マーヴェラスは昨シーズン、レギュラーラウンドで1位ながら、ファイナルでNECに敗れていた。今シーズンも44試合を戦ったレギュラーシーズンは1位で、"負けるわけにいかない"という執念が滲み出ていた。

 そんな相手にレッドロケッツはいかに戦ったのか? エースの肖像は象徴的だった――。

ルーキーながらチームのエースに成長した佐藤淑乃(NECレッドロケッツ川崎)ルーキーながらチームのエースに成長した佐藤淑乃(NECレッドロケッツ川崎)この記事に関連する写真を見る「マーヴェラスは完成度が高かったです」

 レッドロケッツのアウトサイドヒッター、佐藤淑乃(23歳)は感情を押し殺すように語っている。ルーキー1年目ながら、昨シーズン限りで引退した古賀紗理那が背負っていた背番号2を受け継いだエースだ。

「自分たちらしさを出すため、今日(2試合目)は挑みましたが......相手のフロアディフェンスで、"決められそうで決められない"という展開になって、苦しかったです。ただ、自分たちがやってきたバレーボールをしっかりと出せる場面もあったので、そこでの頑張りはしっかりと認めて、これからも成長できると思っています」

 会見場に座った佐藤は、そう言ってマイクを置くと、悔しさが溢れ出したのか、両目を赤くはらした。どうにか涙をこらえようとして、再び口元が歪む。止まらない涙を手のひらで拭い、それでも拭いきれず、ジャージの袖を指でつかんで拭った。エースの自負があるからこそ、激しく感情が揺さぶられるのだろう。

 SVリーグで、佐藤は日本人最高のスパイカーと言える。レギュラーシーズンは895得点を叩き出し、全体の3位。上位6人が彼女以外は外国人選手であることを考えれば、どれだけ突出していたか歴然だろう。チャーミングな容姿もあって、チャンピオンシップ決勝でも最大の注目を浴びていた。

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著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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