女子バレー・デンソー麻野七奈未は日本代表の弟・堅斗の背中を追いかけて「石川祐希・真佑兄妹のような存在になれたら」 (3ページ目)

  • 坂口功将●文 text by Sakaguchi Kosuke

――その全日本インカレでは観戦もされていましたね。決勝では、「ブロック、止めろぉ!!」という弟へのエールが話題になりました。

「いや、あれは......実は私ではなくて。一緒に観戦していた秋重若菜(早稲田大学4年)の声なんです。大声で応援していたら、その声がたまたま場内で響いたという」

――そうだったんですね(笑)。生でご覧になられた堅斗選手の姿はいかがでしたか?

「しばらくプレー姿を見ていなかったので、ずっとひょろひょろのイメージを持っていました。ですが、体もたくましくなっていたし、サイズのわりに左右の動きが機敏で、それにサウスポーからのワンレッグ(ブロード攻撃)も披露していて、本当に魅力的な選手に映りました。

 アタックに関しても、高さがあるからボールを打ちつけたくなるはずなのに、しっかりと誰もいない場所へ長いコースに打っていました。同じミドルブロッカーとして、純粋にすごいな、と思いましたね」

【いつか石川兄妹のように】

――(筆者にとっては)中学生時代の丸坊主が印象的でしたが、今では顔つきもイケメンに。人気を集める選手に成長しました。

「えぇ!?(笑) でも、それこそ今年の正月に実家に帰ったときに、全日本インカレ優勝のご褒美にプレゼントをしてあげたんですよ。『何が欲しい?』と聞いたら、高級ブランドのベルトか、なかなか値段の張る香水をおねだりされました。結局、香水をふたつ買ってあげたんですけどね。キャラが変わりすぎて......弟がよくわからなくなりました(笑)」

――堅斗選手が社会人・プロになったあかつきには、逆に何を買ってもらいましょうか?

「何にしようかなぁ。あんまり今、欲しいものがないんですよね。でも、いずれはひとり暮らしがしたいので、その時は堅斗に家賃代の面倒を見てもらおうかな(笑)」

――今年の3月にはイタリア・セリエAに渡り、石川祐希選手の所属していたミラノ(現在はペルージャでプレー)の活動に参加していました。そうした弟の姿をどのように感じますか?

「どんどん遠い存在になっていく、と言いますか......。すごく頑張っていますし、あの姿からはバレーボールに対する思いがひしひしと伝わってきます。私も負けないくらいの思いを持っていますが、堅斗は日本代表やイタリアでの活動などたくさんのチャンスをもらっていて。その背中が目の前にあるので、私も一緒になって励んでいきたい。それこそ姉弟で日本代表やオリンピックの舞台で活躍する、石川(祐希・真佑)選手の兄妹のような存在になれたらいいなと思います」

――ご自身がSVリーグでしっかりとプレーできているからこそ、日本代表への思いも強いのでは?

「そうですね。2022年に初めてシニアの日本代表に呼んでいただき、そこでは周りのすごい選手たちにただ圧倒されていました。紅白戦には出場しましたが、自分のプレーはまるでできませんでした。

 ですが、そこで速いトス回しなどに触れたり、同じポジションの先輩方から相手選手の見方などを学ぶことができて、それが今のパフォーマンスにつながっていると感じます。もう一回、自分のチームで頑張って、シーズンを通して活躍して、また日本代表に選ばれたいです。

 それに私も堅斗もまだまだ若いので、希望を持っていいと思いますから。姉弟そろって活躍することを願っています」

【プロフィール】
麻野七奈未(あさの・ななみ)

2002年12月13日生まれ、滋賀県出身。デンソーエアリービーズ所属。183cmのミドルブロッカー。金蘭会高校から2021年にデンソーに入団。2022年には女子日本代表に初登録された。2歳年下の弟は早稲田大学で活躍する身長207㎝のサウスポーミドルブロッカー、麻野堅斗。

【写真】デンソーエアリービーズ 麻野七奈未フォトギャラリー

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