パリオリンピック男子バレー「負けず嫌い」の髙橋藍はイタリア戦敗北をどう受け止めたか (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

 その答えは嘘ではないが、やや定型的に思えた。そこで二の矢を放った。

――プレーしていたイタリアが相手なのは運命的で、彼らの負けず嫌いがわずかに上回ったということでしょうか?

 髙橋の表情に小さな動きが生まれ、やや明るい声になった。

「イタリアには、(ジャンルカ・)ガラッシだったり、(マティア・)ポトロだったり、同じチームでやっていた選手がいました。他にも、シーズン中にも常に対戦していた選手ばかりで、このオリンピックでイタリアに当たるというのは特別な感じはありました。だからこそ負けたくなかった、というか......。

 ガラッシとは『楽しんでやろうね』と話していましていけど。やっぱり、自分たちが負けてしまい、次がない、というのが非常に悔しくて。イタリアだったからこそ、勝ちたかった、という思いはめちゃめちゃありましたね」

 本音に近づいたか。その悔しさの度数は、彼にしかわからない。イタリアで勝負どころを磨いた彼にとって、悪夢に近い結果だろう。

「ニッポンコールも聞こえて、背中を押されました。ありがたいし、うれしいこと。皆さんの前で勝ちたかったですが......オリンピックで勝つ選手になっていきたいって思います」

 髙橋は、今後に向けた思いを口にした。負けず嫌いは、勝つまで決して諦めない。

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著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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