パリオリンピック男子バレー「負けず嫌い」の髙橋藍はイタリア戦敗北をどう受け止めたか (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【「ふだんなら確実に取れているはず」】

 そしてターンニングポイントになった3セット目の終盤が訪れる。

 再び勝負どころ、と感じたように、髙橋は覇気を漲らせていた。オールラウンダーらしく、すばらしいディグを見せ、石川の得点につなげ、23-21とリードを広げた。さらに彼がサーブで崩した展開から、石川のプッシュにつなげ、24-21とマッチポイントにしている。

 しかしこの時、2セット目の追い上げのような緊張は生まれず、"これで勝った"という緩和した空気が流れる。

「3セット目、点差がありながら取りきれなかったのが一番だと思います。誰のせいとかじゃなくて、チーム全体が"いける"って感じたと思うから、隙ができてしまって。最後の1点を勝ち取る力が足りなかった」

 髙橋はそう振り返っている。

「3セット目は、ここで終わらせる、というつもりでした。2セット目は逆転で取ることができていたし、3セット目も、イタリアに勝ちきる、と臨んでいましたが......」

 日本はリズムを失って、このセットを25-27と逆転負けした。取るはずだった3セット目を逃し、勝利の女神にそっぽを向かれる。信じられないことに、3セットを連続で落とすことになる。第5セットは得点数では拮抗したものの、失った流れは戻ってはこなかった。

「オリンピックは、他の大会と比べると相手の気持ちの強さも違います。今日もそうでしたけど、ラスト1点が取れない。ふだんなら確実に取れているはずだったんですが、そこも相手は1点を取らせないために死に物狂いでやってくる。それがオリンピックの特別な部分だと思うので、他の大会と比べて勝ちきるのが難しいですね」

 髙橋はそう語ったが、心底を探ってみたくなった。

――「負けず嫌い」が性分の髙橋選手は、この負けをどう受け止めましたか?

 思いきって訊ねると、彼はこう答えた。

「悔しいですね。勝てなかったので、自分のプレーに満足していないです。勝つために、さらに(プレーを)追い求めるべきだし、強くなっていかないといけないと思います。素直に、この悔しさをバネにして次につなげていかないと」

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