錦織圭を陰で支えた名トレーナーの証言「当時は体が後傾していた」 ひざの痛みを解消し、全米OP準優勝に貢献 (3ページ目)
【固定概念を壊したマイケル・チャン】
地道なトレーニングを日々重ねることで、肩甲骨の位置など左右のバランスも確実によくなっていった。動きのひずみが少なくなれば、特定の身体の部位に負荷がかかることもなくなっていく。
そのようなケガ予防を目的とした効率的な体の動きは、ボールを身体の前方でとらえ、結果的に球質も上がるという正の副産物ももたらした。
マイケル・チャンが錦織の新コーチに就任したのは、まさにこの直後である。
1989年に全仏オープンを制したチャンは、アジア系選手のパイオニアにして、テニス史にその名を刻むレジェンド。17歳3カ月でのグランドスラム優勝は、今も破られていない男子シングルス史上最年少記録だ。
そのレジェンドが、錦織に伝えたことは一貫している。ベースラインから下がらず、自ら相手に先んじて展開し、ラリーの主導権を握ること。特にクレーコートでの戦いに関しては、明確なビジョンがあった。
当時のクレーコートでの基本戦術といえば、ベースラインの後方にポジションを取り、バウンドしたボールが落ちてきたところを、こすりあげるように打ってスピンをかける。『クレイ・キング』と呼ばれた若き日のラファエル・ナダル(スペイン)は、その戦法のフィールドにおける絶対王者だ。
その固定観念を、チャンはまったく異なるメソッドで打ち砕いた。
「圭のチームに来て以来、マイケルは『もっと前に入って攻めろ』と言う。そのあたりの戦略や戦術性は、やはりすごかった。
特に圭があれだけクレーで強くなったのは、完全にマイケルのおかげですね。マイケルは圭に『なんでベースラインのうしろに下がり、長いラリーを続ける必要がある? 前に詰め、アングル(角度)をつけてクロスに打てば、簡単にポイント取れるだろう』みたいな感じで言っていましたから」
今でこそ多くの選手が実践する戦い方ではあるが、当時は画期的だった。もちろんそのような戦術を可能にするには、回転のかかった重いボールを跳ね際でとらえ、制御する技術や筋力が不可欠でもある。
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