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錦織圭の突然の申し出に地元コーチは冷や汗 「圭にケガをさせたら俺もスクールも吹っ飛ぶ」 (5ページ目)

  • 内田 暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki

【あの頃の圭が帰ってきたサイン】

 レッスンの合間の休憩時間も残り少なくなり、細木コーチへの取材も終わりが近づく。最後に写真を撮らせてもらうため、インドアコートに向かった。

 その入り口のアルミドアに、大きく「錦織圭」のサインが入っている。聞けば3年前の「お忍びレッスン」の時に、錦織が書き残したものだという。

 ふと、既視感に似た光景が思い出された。

 以前に......もう15年以上前になる。取材で錦織圭の実家を訪れた時に見た、壁や扉に貼られた「オレの部屋!」などの走り書き。

 13歳で家を離れて渡米した錦織は、夏休み等で帰省するたびに、紙に筆ペン等で自作の詩やサインを書き、それを家中に貼っていったという。

「今、ここに圭は住んでいないけれど、それでも『ここはオレの家だ』って主張したいのかもね。自分の痕跡を残すように、こうやって貼っていくんだ」

 そう言い優しく広げた父・清志さんの表情も、懐かしく思い出された。

 グリーンテニススクールのスライドドアに書かれたサインは、額に入れるでもフィルム等で保護するでもなく、雨風にさらされ、ところどころ消えかけている。その自然なたたずまいに、ふるさとの温かみが灯る。

 再び、故郷に残した走り書き──。それは、「あの頃の錦織圭」が帰ってきたサインのようだった。

(つづく)

◆次回・奈良くるみの視点(1)>>「『SLAM DUNK』を貸してくれたのは、圭くんだった」


【profile】
細木秀樹(ほそぎ・ひでき)
1974年11月5日生まれ。松江第一高校 (現・開星高校)出身。広島県のRCCルーデンステニスクラブにて2年間の実績を積んだあと、現在に至るまで島根県松江市のグリーンテニススクールにてコーチとして活動中。錦織圭を5歳から指導し、全国小学生テニス大会、全日本ジュニアテニス選手権、全国選抜テニスなど、さまざまな全国大会で優勝に導く。実子の細木咲良も松江市開催の2016年インターハイ優勝者で現在はプロとして活動。今も多くの教え子たちがジュニア大会や中・高校の全国大会等で活躍する。

著者プロフィール

  • 内田 暁

    内田 暁 (うちだ・あかつき)

    編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。2008年頃からテニスを追いはじめ、年の半分ほどは海外取材。著書に『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)、『勝てる脳、負ける脳』(集英社)など。

【写真】日本女子テニス「6人のティーンエイジャー」フォトギャラリー

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