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錦織圭の突然の申し出に地元コーチは冷や汗 「圭にケガをさせたら俺もスクールも吹っ飛ぶ」 (4ページ目)

  • 内田 暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki

【オーラのない圭が戻ってきた】

「圭が、『コーチ、僕、子どもたちと打ちますよ』って言い始めるんですよ」

 今にも冷や汗を流しそうな表情で、細木コーチが回想する。

「いや、それ、マジでやめてねって言ったんですが、『大丈夫です、一歩も動きませんから』って。子どもたちはやりたがっているなかで、あまりにダメだと言ったら、僕が完全に悪者じゃないですか。

 だから僕も、子どもたちに『いいか! 必ずここにボールを出すんだぞ! 錦織選手を絶対に一歩も動かしちゃダメだぞ! 今こそ練習の成果を見せるんだ!』って言いましてね。

 結果的には、みんなが圭と2〜3球ラリーできて......、本当にすごくいい思い出、いい経験になったと思います。さらにレッスンの第一部が終わった時に、圭が『コーチ、みんなと写真撮りませんか?』と言ってくれて。

 いや、それもありがたいんですが、『圭、お前、自分が来た痕跡は残せないから、サインも写真もダメだって言ってたよね?』って。僕は参加者たちに『写真もサインもNGだから』と厳しく念を押していたので、『また俺が悪者みたいじゃん』と思ったりもして......」

 言葉こそ「困ったやつだ」と言いつつも、声のトーンとこぼれる笑顔に、幸福感があふれ出る。

「でもね、そんな圭を見ながら、すごくいいなって。やはり20代の頃はピリピリしていたし、プレッシャーを感じているように見えるところはありましたよね。

 でもこの時は、そういう感じがまったくなくて。結婚や子どもができたことが大きかったのかな。なんか、いいお父さんしてるな、とも感じたし。小さい時の、みんなとワイワイしてたあの感じ......オーラのない圭が戻ってきたなって思いました。

 一時期は、やっぱり『錦織圭』というオーラをまとったトッププレーヤーという感じで、距離感もあったんです。でも今は、あの子どもの頃のふわっとした空気が感じられて。もちろんトッププレーヤーの威厳もあるんですが、壁がなくなった状態で出てきたなっていう感じです。それが、すごくいいなと思って。すごく、いい大人になったなぁって思います」

 そう語る細木コーチの表情も、「すごくいい」ものだった。

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