錦織圭の助言も取り入れた園部八奏 全豪オープンジュニアを制した17歳の素顔 (2ページ目)
【8割くらいの確率で読みが当たる】
それから、4カ月──。陽光を浴び、背筋を伸ばして全豪オープン会場を歩く彼女は、風格とも言える気配をまとっていた。
「もう、全米オープンの時みたいな寂しさはなくて。自分が勝つぞ、という気持ちのほうが大きいです」
笑みとともに口にしたその言葉を、彼女はコート上でも着実に実践していった。
長い左腕を振り抜き打ち込む強打は、フィジカルの成長にともない、威力と精度を増した様子。それ以上に今大会の園部が示した変化は、「予測能力」の向上だった。
たとえばリターンの時には、相手のサーブコースを読みきったかのように、トスが上がった瞬間にポジションを変える。しかもその大半が、見事に当たっているようだった。
あるはストローク戦でも、相手がボールを打ち返した時、園部はすでにコースに入っていることが多かった。実際に、園部は「長い打ち合いになっても、8割くらいの確率で読みが合っている」とうれしそうに目じりを下げていた。
その「読み」が当たるのは、もちろん幸運でも偶然ではない。先々の展開を予測しプレーすることは、実は園部が昨年から課題として挙げていることだった。
ただ、昨年7月のウインブルドン時には「まだ2本先くらいしか考えられない」と苦笑い。その彼女が先々のラリーでも予測できるようになったのは、本人曰く「ショットの質」にあるという。
「自分がしっかり打てば、だいたい相手が次にどこに打ってくるか予測できる。次の次......くらいまでの展開は読んでいける」
その感覚を、彼女は今大会で急速につかんでいた。
もっとも、それができるようになったのは、オフシーズンでの意識的な取り組みが大きい。
現在、IMGアカデミーで盛田ファンド生を指導する弘岡竜治コーチは、「このオフはフットワークに力を入れました」と言う。それも、単にスピード等を上げるだけではない。「相手のショットを予測し打ち返す」ことを目的とし、試合を想定したコート上でのトレーニングに時間を割いた。
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