錦織圭の助言も取り入れた園部八奏 全豪オープンジュニアを制した17歳の素顔 (3ページ目)
【八奏の名前に秘められた想い】
さらには、リターンでの「読み」もオフシーズンで取り組んだこと。ただこの点に関しては「ちょっとした助言」で大きく改善したと、弘岡コーチは明かす。
「もともと予測はしているけれど、それを信じていなかったり、うまく使えていなかっただけだと思います。『予測してみたら』と言ったら、サラッとできるようになった。今までは予測しても先に動くということをまったくせずに、来たボールに反応しているだけだった。そこを意識することで、予測を使えるようになったという感じです」
その「予測」の力を最も信じ、最も効果的に生かしたのが、決勝戦のクリスティナ・ペニコバ(アメリカ)戦だった。この試合の園部は、相手のファーストサーブでも50%の確率でポイントを取り、セカンドサーブでは実に69%を自分のポイントにつなげた。
なおオフシーズンには、IMGアカデミーの大先輩である錦織圭から、こんな助言を受けたという。
「コートチェンジのあとに、走ってタオルを置きにいくといいよ」
ベンチに座った状態から、走ったりスキップや足踏みをすることで、身体が動き、頭がリフレッシュして冴える。その助言もすぐに取り入れ、「すごくよかったです!」と広げる笑みには、人懐っこい"妹気質"が光った。
174cmの大器は、まだまだ心身ともに、しなやかに成長中。器には次々に新たな情報が注ぎ込まれ、そのたびに彼女は結果と自信の好循環を猛スピードで回転させている。
聞けば、目にも耳にも美しい「八奏(わかな)」の名には、アラビア数字の「8」を「インフィニティ=無限」に見立て、「無限に奏でる」の意が込められているという。五感で吸収したことごとくを養分とし、瑞々しさと風格の和音を奏でながら、園部は大きなストライドで、トップへと続く階段を駆け上っていく。
著者プロフィール
内田 暁 (うちだ・あかつき)
編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。2008年頃からテニスを追いはじめ、年の半分ほどは海外取材。著書に『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)、『勝てる脳、負ける脳』(集英社)など。
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