錦織圭「おじさんは、がんばっています」 後輩から「神」とあがめられる35歳の日本代表愛
「神が降臨するんで......」
自身の試合を快勝で終えた西岡良仁は、コート上でそう言うと、「めちゃめちゃ応援してください!」と二度叫んだ。
テニス国別対抗戦「デビスカップ」(以下:デ杯)の日本対イギリス戦。日本の1勝2敗という背水の陣で挑んだ西岡は、英国のシングルス1〜ジェイコブ・ファーンリーを接戦ながらストレートで破り、最終決戦のステージを整えた。
その舞台に降臨する「神」とは、錦織圭──。西岡の叫びには、前日のシングルスで敗れた錦織を、観客の力も借り是が非でも後押ししたいという、切なる願いが込められているようでもあった。
最終決戦を制して添田監督と抱き合う錦織圭 photo by AFLOこの記事に関連する写真を見る デ杯は2日間(1月31日・2月1日)で行なわれ、両国のシングルス2選手が相手を入れ替えて対戦。そこにダブルス1試合を加えた最大5試合のうち、3勝したチームの勝利となる。
その初日にファーンリーに敗れた錦織は、「ここ半年で一番、悪かった」と感じた自身のプレーに、深い落胆を覚えていた。
「自分のテニスが戻ってきたと思っていたのに、まだこういうプレーが出るのかと。自分への......劣等感というか、マイナスな部分がすごく大きかった」
デ杯の全日程を終えたあとに、錦織が明かした。
そしてその錦織の落ち込みを、当然ながらチームメイトたちは察していただろう。とりわけ、錦織不在の間、エースとして日本代表を支えてきた西岡は、錦織が背負う重圧も含めて共感できていたはずだ。
デ杯は、選手たちが主戦場とするATPツアーとは主催団体が異なり、ゆえにフォーマットも切り離されている。勝ってもランキングポイントは得られず、スケジュール的にもツアーとの連動性は低い。現に錦織も西岡も、2月3日に米国テキサス州ダラスで行なわれるツアー大会参戦を予定しており、その意味でもデ杯出場の負担は大きい。
それでも今回、日本代表の一員に名を連ねた理由を、錦織はこう語った。
「たぶん普通だったら、僕もデ杯に出てないと思います。自分自身がランキングを上げないといけないことと、ケガが出やすい自分の体を考えた時に、あんまり無茶はしたくないところではあります。
でも、やっぱりみんなの熱い思いと、デ杯で2連覇するイタリアの強さを見た時、日本も強さを見せられたらという思いから、日本をどうにかしてワールドグループに戻したいという気持ちが、去年から徐々に高くなってきました」
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著者プロフィール
内田 暁 (うちだ・あかつき)
編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。2008年頃からテニスを追いはじめ、年の半分ほどは海外取材。著書に『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)、『勝てる脳、負ける脳』(集英社)など。