錦織圭「おじさんは、がんばっています」 後輩から「神」とあがめられる35歳の日本代表愛 (3ページ目)
【錦織が恥ずかしそうに放った言葉】
勝利の瞬間、安堵の笑みをこぼし控え目に喜ぶ錦織に、弾かれるように飛びついたのは西岡だった。15歳で米国IMGアカデミーに留学し、錦織と練習してもらう機会も多かったという西岡は、英国戦シングルスで2勝をあげた日本勝利の最大の功労者だ。
今回、出場の機会はなかった内山靖崇は、緊急招集に応じ欧州遠征を切り上げて駆けつけた。
「来るかどうか悩んだけれど、やはり添田(豪)くんが監督なのも大きいし、圭くんがメンバーに入っていることも自分にとって、参加する非常に大きな要因になった」と内山は言う。
ダブルス要員として代表に初選出された柚木武は、大学を経てプロとなった26歳。196cmの巨躯から打ち下ろす時速220キロ超えのサーブは、英国の元世界1位ペア相手にも猛威を振るった。結果は6-7、6-7の惜敗ではあるが、ダブルススペシャリストとしての可能性を大いに示した。
そんな柚木を錦織も、「今回初めて濃密な時間を過ごした」うえで「将来性がある」と評する。何より西岡については、「どう考えても今回は、西岡君の2勝が大きかった」と手放しで称賛した。
「昨日、僕が吹っ飛ばされたファーンリーにしっかり勝ってくれた。相手によってプレーを変えられる頭のよさも見られた。チーム全体もそうですし、西岡選手への信頼度もすごく上がったなと」
後輩たちの成長を頼もしく見守る錦織は、「自分の立ち位置として、一番経験もあって、年齢も上。けっこう、みんな年齢下なので」と言うと、少し間を開け、恥ずかしそうに笑いながら続けた。
「そこに溶け込めるように、おじさんは、がんばっています」......と。
後輩からは親しみも込めて「神」とあがめられる、自称「おじさん」----。35歳を迎え、なお成長を求めて葛藤もする彼は、年齢とともに深まる仲間への愛着を自覚しながら、強い日本代表を示すべくコートに立つ。
著者プロフィール
内田 暁 (うちだ・あかつき)
編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。2008年頃からテニスを追いはじめ、年の半分ほどは海外取材。著書に『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)、『勝てる脳、負ける脳』(集英社)など。
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