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錦織圭の2024年 肩・ひざ・足首の痛みを乗り越え完全復活への兆し「来年に向けていい準備ができた」

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki

 錦織圭が、走り、舞い、笑い、ずっこけた──。

 12月8日に開催された「ドリームテニスARIAKE」は、能登半島地震の復興支援のチャリティイベント。日本のトッププレーヤーたちが世代も種目も越えて集結し、趣向を凝らしたエキシビションマッチの数々で1万人の観客を大いに沸かせた。

 なかでも、試合に、トークに、そしてチームキャプテンとして振るう采配にと、八面六臂(はちめんろっぴ)の活躍を見せたのが錦織圭。魅せるプレーでファンを沸かせ、後輩たちに気配りしつつ、自然体のトークで笑い誘う。そんな華やかな姿には、瑞々しさと成熟をブレンドした風味があった。

錦織圭はドリームマッチで元気な姿を見せてくれた photo by AFLO錦織圭はドリームマッチで元気な姿を見せてくれた photo by AFLOこの記事に関連する写真を見る 錦織の2024年は、我慢の末に完全復活の手応えを掴むプロセスだった。

 3月のマイアミオープンで8カ月ぶりのツアー復帰を果たすも、直後に肩に痛みを覚え、再び休養を余儀なくされる。5月の全仏オープンは、前哨戦出場なしのぶっつけ本番だった。

 本人も「いきなりグランドスラムに出るのは、ハイリスクな気はしています」と不安をにじませるも、「自分のために証明できる場にもなる」と明言。はたして初戦で錦織は、伸び盛りの長身選手(203cm)、ガブリエル・ディアロ(カナダ)相手にフルセットの死闘を制する。2回戦は肩に痛みが出て棄権するも、求めていた「ハイリターン」の一端を握りしめ、全仏会場をあとにした。

 その後は、ウインブルドン直前で足首を捻挫。フィジカル的にも、テニス的にも厳しい時期が続いたという。

 それでも、自分のなかに点在するパーツや歯車が噛み合う日の訪れを信じ、夏以降の彼はコートに立ち続けた。8月のカナダマスターズで世界12位のステファノス・チチパス(ギリシャ)に快勝したのは、自分を信じる大きな根拠になる。

 そして9月末、6年ぶりに出場したジャパンオープンにて、彼は全盛期を彷彿させるプレーを満員の有明コロシアムのファンに示した。初戦では前週にATPツアー優勝を果たしたばかりのマリン・チリッチ(クロアチア)に勝利。ライバルとの熱闘でかつての自分を思い出したか、2回戦では29位のジョーダン・トンプソン(オーストラリア)に6-2、6-3で快勝する。

「若干、イメージを超えてきた。『これが入るんだ?』みたいなショットが、けっこうあった」と自分で自分に驚く錦織は、「やっぱ、これが自分なんだなって。やっぱり潜在能力はまだあって、それが急に出るタイミングが今日だったんだなって」と朴訥に口にした。

 それは控え目な彼の、復活宣言だったかもしれない。

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著者プロフィール

  • 内田 暁

    内田 暁 (うちだ・あかつき)

    編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。2008年頃からテニスを追いはじめ、年の半分ほどは海外取材。著書に『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)、『勝てる脳、負ける脳』(集英社)など。

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