錦織圭が語った「ワクワク」の根源 全米OP前の会見で明かした葛藤と向上心 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by Getty Images

【錦織にとってグランドスラムは特別な場所】

 ただ翌週、出場を予定していたシティ・オープンを試合直前で棄権する。続く2大会は、いずれも開幕前に欠場を公表した。

 理由は、ひざのケガ。それはアトランタオープンで負ったものだった。

 それから4週間経った今も、まだ痛みは消えていないと錦織は明かす。

「この1週間で、コートで打ちはじめてはいるんですけど、最初の2〜3週くらいが全然治らなくて。画像上で見ても、明らかに(痛みの原因が)これだなっていうのがちょっとありまして。そこまで大きなケガではないんですけど、炎症が治まるのがいつかというのを、自分でも待っている状態なので」

 ケガの詳細を語ると、「正直、フィフティ・フィフティではあるかなと思っています」と、全米オープン出場の可能性に言及した。

 ボールを打ち始めてまだ1週間、しかも、炎症が治まっていないという現状を鑑みれば、通常なら出場を見送る判断をしても不思議ではない。

 それでも、ぎりぎりまで希望をつなげているのは、やはりグランドスラムが特別な場所だからだ。

「一番は、トップの選手と対戦できる可能性があるところが、どうしてもワクワクしてしまう。この大舞台で、お客さんのいる前でプレーできる幸せとワクワクが、やっぱりほかの大会よりは自然と湧き上がってくるところです」

 そのような「ワクワク」の根源には、復帰後の自身のテニスそのものへの、確固たる手応えがある。

「プレー面でいうと、けっこう満足はしていて。アトランタでジョーダン(・トンプソン)に勝てたのは、ものすごい自信になりましたし、プレー内容もよかったです。

 その後のシャン(・ジュンチェン)戦も、前に出たり、自分のプレーが思いっきりできた。どの復帰後の大会よりも、早い段階で満足はできているので、そういった意味では今までにない経験ができているなと感じています」

 プレーそのものについて語る時、錦織の口調はとたんに明瞭になる。

「今となっては」と前置きしつつも、「ウインブルドンも出ればよかった。身体が100%の状態だったら、1〜2回は勝てた可能性があった」と自ら切り出すほどに、心はハイレベルの戦いを欲していた。

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