大坂なおみ、日本人トレーナーとの決別は吉と出るか。全米オープン初戦は「余計にプレッシャーを感じる」 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

「チームなおみ」に大きな変化

 そのような停滞感を、なんとか打破したいと思ったのだろうか。大坂は今季、チーム編成を更新してきた。

 ひとつは、トレーナーの中村豊との決別だ。マリア・シャラポワに2度の全仏オープンタイトルをもたらした名トレーナーが"チームなおみ"に加わったのが、2020年の初夏。以降、中村は大坂とも2度のグランドスラム優勝の瞬間を共有してきた。

 その中村がチームを離れたのは、マイアミ・オープン後のことである。中村の力が最も必要とされるはずの、クレーコートシーズンに挑むタイミングでの別離であった。

 もうひとつの大きな変化は、コーチのフィム・フィセッテの離脱だ。大坂がフィセッテをコーチに雇ったのは、2019年末。"プロフェッサー"のニックネームを持つ理知的な戦略家は、大坂のテニスに新たな技術と、データに基づいた戦術理解度をもたらした。

 そのフィセッテと1カ月前に決別した理由を、大坂は次のように語る。

「私は、試合中に相手に対応するのが上手なほうだと思う。だから、どこに打つべきだとか、確率のことなどを言ってくる人が必要だとは思わない。今の私に必要なのは、自信を与えてくれる人」

 そう現状を分析する大坂が今、コーチとして身近に置くのは、彼女の父親。

 その理由を、「父は私のことを誰よりも長く知っている人物であり、私のテニスの上達もずっと見てきた」と語る彼女は、こうも続けた。

「私は、今を楽しもうとしているの。その助けを必要としている時に、父がそばにいてくれることに感謝している」

 今大会開幕を控えた会見で、大坂は幾度か「楽しみたい」の言葉を口にした。それはうがった見方をすれば、今の彼女が「テニスを楽しむのが難しい状態」だからかもしれない。

 身体の痛みのこともある。結果が出ていないがために、自信を失いつつもあるのだろう。実際に彼女は、会場での練習を振り返り「ものすごく不安になった」と告白する。

「ここではいつもいいプレーをしたいと思うのに、実際には最近、いいプレーができていないから」

 それが不安の主成分。加えて、「初戦の対戦相手がとてもタフなので、それも余計にプレッシャーを感じる理由」だとも明かした。

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