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ダニエル太郎は「守りの人」からプレースタイルが激変。マリー撃破は偶然ではない (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

【ストローク重視の練習をやめた】

 もうひとつの新たな取り組みは、メンタルコーチのジャッキー・リールドンに師事したこと。水泳選手やオペラ歌手なども指導するリールドンは、テニスだけでなく、日々の思考にも新たな視座を与えてくれる。

 特に大きかったのは、「ミスすると自分をパニッシュ(罰する)する考え方を、変えるように言ってくれたこと」だった。挑戦した結果のミスをよしとし、次のプレーに切り替える。その思考法が標榜するプレーのベースにあり、「テニスのゲーム性を楽しむ」ことにもつながったのだろう。

 グローネフェルトとの契約は昨年で終了したが、目指す方向性は今も変わってはいない。

 加えて、今大会のダニエルが目に見えて進化したのが、冒頭でも触れたサーブである。球速が上がり、コースや球種の幅も広がった。その理由は、何よりも「サーブの練習時間を増やした」ことだと本人は言う。

 この言葉だけを聞くと、そんな簡単なことかと思われるかもしれない。ただ「練習時間を増やす」には、複合的な要因が絡んでくる。

 多くの技術習得が求められるテニスにおいて、限られた練習時間を何に割くかは、実は難しい命題だ。そして多くのケースでは、ストロークが練習の中心になりやすい。実際にダニエルも、「今までは8割くらいがストロークの練習だった」という。

 その時間配分を、「半分くらいはサーブにあてた」ことが、シンプルながら究極の上達への道。練習内容も、サーブの技術向上だけでなく、相手の返球からどう展開していくかも重視した。

 それら取り組みの正しさを、ダニエルは今大会の予選から本戦2回戦まで勝ち上がることで、まずは実感できただろう。

 そのうえで挑むマリー戦では、「ビッグマッチではあるが、実際にやるのは普通のテニス」と考えることから始めた。

 ダニエルの言う「普通のテニス」とは、「ポイントごとに何をすべきかに集中すること」。そして「必ずボールを自分から動かす」という大前提。マリーが初戦でフルセットを戦っていること、さらには前週のトーナメントで決勝まで勝ち上がったことも踏まえ、「相手の疲労を自分のアドバンテージにした」とも言った。

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