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ダニエル太郎は「守りの人」からプレースタイルが激変。マリー撃破は偶然ではない (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

【マリーに勝てた最大のカギは?】

 2016年末に世界1位に至ったマリーは、ダニエルが標榜するテニスの体現者だとも言える。安定のストロークで築く基盤に、「同じショットを2度、続けて打たない」と称されるほどの知略を展開。3年前に人工股関節の手術を受け、再起不能とも言われた窮状から復帰した、まさに不屈のチャンピオンだ。

 その"レジェンド"とネットを挟むダニエルは、マリーを彷彿させるプレーを見せた。相手の揺さぶりに耐え、ボールを左右に打ち分けながら、攻めるべき機をじっと待つ。

 特に効果的だったのが、高い軌道のショットでマリーの目線と打点を崩し、チャンスボールを叩き込むパターンだ。試合序盤のターニングポイントは、6回のデュースの末にブレークした第1セットの第3ゲーム。マリーの体力を削るとともに、試合の主導権を掴み取った。

 スコアだけを見ればストレートの完勝だが、2時間48分の試合時間が激闘の実状を映し出す。

 長く厳しいこの戦いを制することができた、最大のカギは?

 その問いに勝者は、無邪気な笑みをこぼしていった。

「感情の上がり下がりが、あまりなかった。あってもコントロールできていた。こういう状況に負けなかった、揺さぶられなかった」

 そんな自分に、強さを感じることができた----。それが、ダニエルがこの試合を「キャリアで最高の勝利のひとつ」に位置づける理由だ。

 もっとも、「試合に勝っても負けても、人生は続いていく」と穏やかに語る彼に、ことさら浮足立つ様子もない。

 初めて立つグランドスラム3回戦のステージで当たるのは、20歳にして世界の10位につけるヤニック・シナー(イタリア)。ダニエルの現在地を知るうえでも、これ以上にない相手だ。

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