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大坂なおみが投じた一石。外国人記者が会見で感じた違和感とは何か (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 翌6月1日の朝、『レキップ』紙チーフエディターのルフェーブル氏は、電子版の大坂のニュースに800を超えるコメントがついたのを見て、驚いたという。

「通常、テニスのニュースにここまで多くのコメントがつくことはありません。フェデラー対ナダルなどの試合があると、両選手の熱狂的なファンが書き込みますが、そうでもないかぎりとても珍しいことです」

 それらコメントの内容も、多岐にわたっていたという。

 記者会見の在り方や存在意義を問うもの、そして、大坂の一連の行動に関する賛否......。

 ただ、それら多様な書き込みに通底するのが、アスリートの鬱や精神状態に対する人々の深い関心だった。コメントの数や内容からしても、日ごろテニスをそこまで見ていない人たちもこのテーマについて発言していると、ルフェーブル氏は感じたという。

「テニスを超えて、あらゆるスポーツや、スポーツをとりまく社会全体の出来事として、人々は鬱や情緒不安定について関心を抱いているのだと感じました」

 それはもしかしたら、コロナ禍により人々や社会全体が閉塞感に包まれていることも無関係ではないのかも......。そんな私見も、ルフェーブル氏は控え目に口にした。

◆【現地発】大坂なおみの不意打ちの声明に震撼。全仏OP関係者の反応は>>

 いずれにしても、これだけ多くの人々が注目するこのテーマをしっかり取り上げるべきだと、同紙のスタッフは判断する。そこで、大坂の棄権発表の翌日にはFFT(フランステニス連盟)やWTAに、選手の精神面をケアする体制がどの程度整っているのか、そして今後いかに改善していくのかなどの取材に着手した。また、ゴルフなどテニスと似た競技性を持つ競技団体に対しても、同様のアプローチを始めたという。それら特集記事は近いうちに、同紙に掲載されるはずだ。

 困惑を呼ぶ大坂の意思表明から始まった今回の一連の騒動は、大会やファン、メディア、そして当の大坂の誰もが望まぬ形で終焉を迎え、あとには悲しみが残った。

 ただ、彼女の行動と告白が社会に投じた一石は、人々の感情を揺さぶりながら波紋を広げ、ひとつの潮流を生み出そうとしている。

18歳で全仏デビューを果たした時の大坂なおみ

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