大坂なおみが投じた一石。外国人記者が会見で感じた違和感とは何か (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

「日本の質問に応じている時の彼女のほうが、私は個人的に好き。テニスの技術や戦術、心理面などについてしっかり答え、プロフェッショナルだと感じるから。

 対して、欧米メディアに対応している時のナオミは、記者たちが求める彼女を演じているように見える。優等生でユーモアがあって、時にちょっと皮肉屋で個性的で......そんな感じの大坂像を」

 なるほど、そういう見方もあるのだと、視野が広がったように感じたと同時に、もし大坂がそのように自分を使い分けているのだとすれば、それは相当にストレスだろうなとも思った。

 大坂の最初の投稿から日が明けると、会場ではトップ選手たちが"プレトーナメント会見"を行なった。ここでも話題の中心は、やはり「なおみの声明をどう思うか?」だ。

 そのテーマについて、ほとんどの選手は「彼女の気持ちはわかる」と一定の理解を示しつつ、「だが、会見は我々の仕事の一部」と回答する。ラファエル・ナダル(スペイン)のように「世界中を飛びまわり記事を書いてくれる人たちがいなければ、我々アスリートは今日の立場ではいられなかった」と、会見やインタビューの重要性に深い理解を示す選手もいた。

 ちなみにこの"プレトーナメント会見"も、記者からの要望があれば応じなくてはならないと、大会規約に記されている。

 かくしてプレスルームでは、大坂の話題が席捲した。ただ、フランス国内やフランスのテニスファンの間では、大坂の会見拒否はそこまで大きなトピックではなかったという。

 フランスのスポーツ専門紙『レキップ』の報道も、基本的には事実関係を客観的に告げる、いわゆる"ストレートニュース"にとどまっていた。

 大坂が「事態の収拾をはかる最良の方法」として、今大会からの棄権を自身のソーシャルメディアで表明したのが、現地時間の5月31日夜9時ごろのこと。

『レキップ』紙はそのニュースを6面に急遽差し込み、対向ページには3年前に作成した「テニス選手の会見とメンタリティ」がテーマの記事を編成して再掲載した。ちなみに1面は、初戦で快勝したフェデラー。また、大坂が投稿した日のうちに、電子版にストレートニュースを掲載した。

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