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錦織圭は輝きを取り戻せるか。似た境遇の同世代ライバルに聞いた (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 第1セットと第2セットは互角に近い戦いを見せたが、結果的にはいずれも終盤の競り合いを相手に制され、ともに失った。とくに第2セットのタイブレークでは、やや攻め急いだかのようなミスが続く。本人は2週間の隔離を言い訳にはしなかったが、2セット目の終盤あたりから、とくに前に出る足に鋭さを欠いた感は否めない。

「タイブレークでは、プレーの仕方を忘れたんじゃないかと思うくらいミスが多くて。もうちょっとじっくりやりたかったですね、あそこは。選択ミスがあったので、試合勘が戻ってくれれば......」

 そこが悔いた点ではあるが、同時に、試合勘と打球感が噛み合う日は「いつか来る」と彼は言った。

 昨年10月に肩を痛めツアー離れて以来、4カ月ぶりとなった復帰戦で戦った3試合は、いずれもランキング20位以上のトッププレーヤーが相手。いつか訪れる「感覚の戻り」を得るには試合数と勝利が不可欠で、その勝利を得るには、大会序盤での上位選手との対戦を避けられるまでにランキングを上げる必要がある。

 錦織はそのプロセスを、「どうにかして、這い上がらなくてはいけない」との言葉で表現した。

「タフな道のりだと思っています。今年できるかどうかわかりませんが、今日の自分のプレーがもうちょっとよくなれば、できそうかなというのが若干見えてきた。復帰の道のりとしては、悪くないと思っています」

 10年ほど前に踏破した道に、31歳になった今、彼は再び挑む覚悟だ。

 錦織がカレーニョ・ブスタに敗れたこの日、2014年全米オープン決勝で錦織を破ったマリン・チリッチ(クロアチア/同43位)も初戦敗退を喫した。

 錦織と同世代のチリッチを破ったのは、今年5月に30歳を迎えるグリゴール・ディミトロフ(ブルガリア/同21位)。彼もまた錦織たちと同様に「次代を築く」と期待された、かつての「新世代」のひとりである。

 快勝にもかかわらず、チリッチとの初戦対戦に「奇妙な感じだ」と感傷的な表情を浮かべるディミトロフ。そんな彼に、いささか不躾だとわかりながらも、あえて尋ねてみた。

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