2021.02.09

錦織圭は輝きを取り戻せるか。似た境遇の同世代ライバルに聞いた

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 例年より3週間遅れて開幕した全豪オープンは、気温が最高で18度までしか上がらず、秋の気配が漂い始めていた。

 新型コロナウイルス感染拡大防止のため、一日あたりの入場者数も制限された。だが、それでも初日は約18,000人のテニスファンがメルボルンパークに足を運んだ。

12年ぶりに全豪オープン初戦敗退を喫した錦織圭 錦織圭(世界ランキング42位)対パブロ・カレーニョ・ブスタ(スペイン/同16位)の一戦が組まれたのは、会場で4番目の格付けになるアリーナである。

 日が陰り、吹き抜ける風が体感温度を実気温より下げるが、それでも客席の3〜4割ほどを埋めたファンの数が、この一戦への関心の高さを物語っていただろう。

 2年前のこの大会で、ふたりが繰り広げた5時間超えの死闘を記憶していた人も多かったかもしれない。年に一度のこの時を心待ちにする現地在住の日本人ファンは、錦織が置かれた2週間完全隔離などの厳しい状況を知ったうえで、彼のプレーを祈るような気持ちで見に来ていた。

 そのような、不安も交じる観客の期待感を、試合立ち上がりの錦織は喜びと驚きに変えてみせた。

 最初のポイントで、フォアを左右に打ち分け相手のミスを誘うと、センター、ワイド、そしてセンターに打ち込む切れ味鋭いサーブで、あっさりとゲームキープ。

 その2ゲーム後のダブルフォルトを機にブレークを許すが、直後のゲームでは強打をフェイントにスライスでウイナーを奪うなど、錦織らしい創造性と意外性をコート上で光らせる。2日前のATPカップでは鳴りを潜めたネットプレーも、相手の予期せぬタイミングで効果的に決めてみせた。客席から湧き上がる歓声が、会心のプレーに呼応する。

「今までにないくらい、試合に入ってから『勝てるんじゃないか』と思えた出だし。それくらい球を捉える感覚や球筋など、いろいろよかった」

 望むようにボールを操れる喜びを、錦織自身もコート上で感じていた。

 だた、それだけ状態がよかったからこそ、突きつけられた厳しい現実もある。