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錦織圭も認める実力。
内山靖崇は細いチャンスの糸を縄に変えた

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 それは大会開幕の数日前、最後の最後にスルスルと目の前に降りてきた、細い糸のような成功への手がかりだった。

 楽天オープン本戦に欠場者が出たため、他の日本人選手たちが繰り上がった末に回ってきた、予選の主催者推薦枠。

楽天オープンでベスト8まで食い込んだ内山靖崇楽天オープンでベスト8まで食い込んだ内山靖崇 それは小さなきっかけで、いつプツリと途切れてもおかしくない糸だっただろう。どうせ出られないものだとあきらめ、準備を怠っていたら、予選の初戦を勝つこともままならなかったはずだ。だが、その微かな手がかりを、彼は勝利と確かな自信へと変えていく。

 予選2試合をいずれもストレートで制し、本戦でも1回戦で第4シードのブノワ・ペール(フランス)を圧倒した。2回戦では今季好調のラドゥ・アルボット(モルドバ)に、2時間25分の熱戦の末に競り勝ってみせる。

 とくにこの2回戦は、第1セットをタイブレークの末に落としながらも、第2セットでは嫌な流れを自ら断ち切り、粘り強く戦い勝利を手繰り寄せた。精神力の強さを示した末の逆転勝利は、今季の内山靖崇の成長を端的に物語る快勝だ。

「周りがどう見ていたかわからないですが、僕は性格的にも、めちゃめちゃハングリー精神丸出しでプレーするほうではないし......」

 183cmの恵まれた体躯を、こちらの目線に合わせるように少し屈め、物静かながら理知的な口調で、彼は一語一語を紡ぐ。

 1992年生まれ、現在27歳。小学6年生時に全国小学生選手権を制した彼は、盛田正明テニスファンドの支援を得て、米国フロリダ州のIMGテニスアカデミーに留学した。

 その後もジュニア大会で活躍し、18歳時には世界への登竜門と言われる「ワールド・スーパージュニア」で単複優勝するなど、若くして将来を嘱望されるようになる。サーブがよく、ネットプレーも巧みにこなす柔軟性と攻撃力も、日本人選手には希少なタレントだ。

 IMGアカデミーでともに時間を過ごした錦織圭も、目をかける存在である。その先輩からは、「ミスを減らせば、50位にはすぐに入れる」と、ハッパをかけられたこともあると言う。

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