ダニエル太郎は勝つことで得た「境遇」に葛藤。登山で迷う心を整えた

  • 神 仁司●文・撮影 text&photo by Ko Hitoshi

ジャパンオープンで初めてベスト8に進出したダニエル太郎ジャパンオープンで初めてベスト8に進出したダニエル太郎

 ダニエル太郎(ATPランキング111位、10月7日づけ/以下同)が、楽天ジャパンオープン(9月30日~10月6日、東京・有明/ATP500)で、初のベスト8に進出した。

 ワイルドカード(大会推薦枠)で出場したダニエルは、1回戦で、第2シードのボルナ・チョリッチ(15位、クロアチア)を6-4、4-6、7-6で破り、いきなりビッグアップセットを演じてみせた。ただ、ダニエルには対戦相手が格上だという気負いはなく、決して勝つのが無理ではない選手と思えたのが功を奏した。

「彼(チョリッチ)が、トップ100ぐらいに入る何年か前から知っているので、(ランキングが)上がっていても、そんなに上の選手という感じがしなかった」

 ジャパンオープン5度目の挑戦で、初めて1回戦を勝利して勢いに乗りベスト8入りした26歳のダニエルだが、ここまでに至る道のりは決して平坦ではなかった。

 全仏オープンの後(6月後半)に戦ったイタリアでのチャレンジャー2大会では、いずれも初戦負けで最悪だったとダニエルは振り返る。なぜ、最悪になってしまったかは、2018年のシーズンを振り返らなければならない。

 2007年から約10年間ダニエルは、スペイン・バレンシアを拠点にしていたが、2017年9月に心機一転日本へ戻り、現在はナショナルトレーニングセンターで、日本テニス協会のナショナルコーチらと主に練習している。その練習の成果は、2018年シーズンに現れた。

 まず、3月に、マスターズ1000・インディアンウエルズ大会の2回戦で、ノバク・ジョコビッチ(当時13位、セルビア)をフルセットで破る大金星を挙げた。

 さらに同年5月には、ATPイスタンブール大会で初優勝を果たし、日本男子史上4人目となるATPツアー優勝者となった。そして、8月には、自己最高のATPランキング64位を記録した。

 世界ランキングの上昇によって、ATPの250だけでなく500レベルの大会でも本戦を戦えるようになった。世界のトップ50が目前に迫り、獲得できる賞金も各段によくなったことで、子供の時にテレビで見たトッププロの地位に足を踏み入れたことを自覚し、そこに留まりたいと願うようになる。

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