大坂なおみが故郷での大会期間中、ずっと自らに言い聞かせていたこと (2ページ目)

  • 神 仁司●文・写真 text&photo by Ko Hitoshi

 さらに圧巻だったのが、大坂のサーブだ。時速180~190キロの高速フラットサーブと、時速150~160キロの回転系サーブを駆使して緩急をつけ、サービスボックスのコーナーを狙うサーブも打った。そうすることでパブリュチェンコワに的を絞らせないと同時にタイミングもはずし、サービスゲームを常に優位に進めることができていた。

「彼女(大坂)のサーブがすばらしかった。何とかブレークしようと、彼女のサーブをやりづらくさせようと、リターンポジションを(ベースラインの)後ろに下げてみたりしたけど、突破口を見つけられなかった」(パブリュチェンコワ)

 結局、パブリュチェンコワは活路を見出せないまま、1ポイントもブレークポイントを奪えなかった。

 大坂のファーストサーブでのポイント獲得率は100%(20/20)という驚異的な数字。それをツアーで12回優勝している相手に対してやってのけた大坂の力が、現在の女子テニス界で際立っていることをあらためて感じさせる試合となった。

 今回の東レPPOで、大坂は「自分の気持ちが高揚しすぎなければ、うまくプレーできる」と、自分に言い聞かせながら戦ったという。

 気持ちに乱れが生じて、大坂が苦戦を強いられたのは、ユリア・プティンツェワとの準々決勝だったが、冷静さを取り戻した準決勝と決勝では、自分自身のプレーを貫徹して相手を凌駕した。

 そして、今回の優勝までの道のりで学んだことを、大坂は次のように挙げた。

「ひたすら毎ポイント集中していくことと、常にポジティブなエネルギーを持つことです」

 2019年シーズン、1月のオーストラリアンオープン以来となる待望の優勝となった今大会を起爆剤にして、世界ナンバーワン奪還へ向けて再浮上のきっかけにしたいところだ。それについて大坂は、現時点では「確信できるほどではない、というのが本当のところです」と正直に答えた。今後、大坂は中国へ移動して北京と天津で開催されるWTA大会に出場する予定だ。

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