2018.05.28

錦織圭、地元21歳「イノシシの突撃」を
かわして全仏を快勝スタート

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

「今日は朝から、めちゃくちゃ眠かったので……」

 多少の照れ隠しもあっただろうか。試合後の会見で「だいぶお疲れのように見えますが?」と問われた錦織圭は、ふわりと笑みを浮かべてそう答えた。

地元期待の若手を攻略して初戦を突破した錦織圭 全仏オープン開幕日に組まれた、昨年のウインブルドン以来となるグランドスラムの初戦。錦織の試合は11時開始に続く2試合目であり、実際にはそこまで早い時間のそれではない。それでも「朝早い時間は大変です」と言うほどの切迫感を覚えた真の理由は、もしかしたら、次の言葉にあるかもしれない。

「1回戦だったので、やっぱり緊張はしました。久しぶりのグランドスラムだし、これだけ結果も出ていると、ここでも結果を残したいと自然と思い、自分にプレッシャーをかけるところも出てきてはいるので……」

 4月のモンテカルロ・マスターズ準優勝に象徴されるように、今季はクレーコートでいい結果を残せている。だが、全仏は復帰後初となる5セットマッチで、対戦相手はまったくと言っていいほど情報のない主催者推薦枠の304位の地元選手。それら種々の条件が重なるなか、興奮や不安がないまぜになり、浅い眠りのまま白々と明ける日曜の朝を迎えたとしても不思議ではない。

 その緊張状態にある錦織を襲ったのは、失うもののない対戦相手の「無謀と紙一重」の猛攻だ。21歳のマキシム・ジャンビエ(フランス)はグランドスラムやATPツアーでの本戦出場経験はなく、今回の主催者推薦がようやく手にしたキャリア最大のチャンス。実績が乏しいにもかかわらず、フランステニス協会が彼を推したくなる訳は、193cmの長身から打ち下ろされる強打と柔軟性を見れば納得もいく。

 ベースラインのはるか後方からでも長い腕をしならせ、ボールを全力で叩くその姿に、錦織は「戦前に抱いた想像とは違う。ディフェンスしながらもフラットで打ってくるし、展開も早い」と軽い衝撃を覚えていた。

 一方のジャンビエには「勝機を見いだせるとしたら、攻め続けるしかない」という自覚、そして「これが僕のスタイル。この先いい選手になるためには、攻めきらなくてはならない」との覚悟があった。