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軽いラケット、柔らかいボールから、
錦織圭の復活はもう始まっている (3ページ目)

  • 神 仁司●文・写真 text & photo by Ko Hitoshi

 でも、今回いろいろ経験して、自分がケガと付き合っていかなきゃいけない体というのを、十分認識しているということもあって、だいぶ落ち着いてプラスにも考えられるし、無理矢理プラスにしなくてもいいと楽に考えて、結構ポジティブにいられたりします」

 錦織は試合に出られず時間ができたことを逆に利用して、トレーニング、フォーム改善、道具の見直しなどに取り組みたいと考えている。だから、時間も要るし、復帰も簡単に決められないと付け加える。

 なかでも、12月に28歳になる錦織にとって、フォーム改善は簡単なことではないだろう。もちろん右手首に少しでも負担がかからないようにすることは求められるが、錦織ほどの選手が技術的に何かをいじることは冒険となる。

 ただ、サーブでボールをインパクトした直後にラケットを振り下ろす動作は、今からでも改善できるのであれば、右手首のためにも見直しを検討すべきではないだろうか。

 さらに、錦織にはサーブでの恐怖心を振り払う課題も残っている。

「一番怖いのはやっぱり痛めた(原因となった)サーブですね。やっぱりスピンサーブを打つのがめちゃくちゃ怖いので。それを何回もやって、怖さをとっていかないといけない」

 今年の9月に現役生活を終えた伊達公子も、第2次キャリアではケガに苦しんだ選手だった。それだけに錦織が再浮上をすることが、どれだけ大変なことか理解を示す。

「彼は1回、ひじで手術をしてカムバックしている経験があるので、自分が一番よくわかっていると思います。今のポジションから、また元いた場所に戻るのは簡単なことではないでしょうし、彼にとって大きなチャレンジになるのは間違いありません。これはケガをしたら誰もが通らないといけない道で、感覚や試合勘、思うようにいかないことにも逃げずに向き合っていかないといけないことは当然出てきます。

 今まで以上に葛藤は出てくると思うけど、それは避けられないので通るしかない。彼がどれだけ本当に戻りたいという気持ちを強く持って、信じ切れるか。そこをやり切ってほしいし、やれるだけの才能が彼にはあります」

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