元世界4位のクルム伊達公子だからわかる「錦織君は今が苦しい時期」
26歳で一度、現役引退したクルム伊達公子。現在、26歳の錦織圭の立場を思いやったクルム伊達公子インタビュー(3)
ここまで、彼女の近況について、20年前の女子テニスについて、話を伺ってきた。最終回は日本のテニス人気を背負う錦織圭のこと、そして、37歳にして、クルム伊達公子として、現役復帰した心境について、話を聞いた。
――長いテニス史の中で、日本人プレーヤーが世界ランキング(シングルス)のトップ5に入ったのは伊達さんと錦識圭さんだけです。23歳で日本人初 の世界ランキングトップ10入り、25歳で4位にまで上り詰め、96年フェドカップでは当時の世界女王グラフに3時間25分の激闘で勝利しました。まさに 頂点へ駆け上っていくのだろうと期待が最大になっているときに引退しました。ご自身の中には「さぁ、いよいよ頂上へ向かう」と待ちわびるような期待感はな かったのですか?
「苦しくて、しんどくて、ツアーも楽しくないし......孤独でした。妙な怖さもあったのです。どんどん夢が現実的に実現してゆ くので、その先、その後の人生についての恐怖。人間の持っている運は限られているだろうから、万が一トップ3にでも入り、さらにさらに夢を叶えてしまった ら、その後は人生に悪いことばかり起きてしまうのではないか......という思いで。心理学的に成功の恐怖(Fear of success)というらしいですね」
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