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天然ではない。
「まったく覚えてない」錦織圭の思考回路 (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki  photo by AFLO

 翌日戻ってきたローランギャロスのセンターコートは、雨は上がったが風が強く、気温は前日に輪をかけて低い。立ち上がりは「硬くなった」うえに、「風もすごくあって難しいコンディション」だったこともあり、錦織にミスが目立った。ややボレッリペースで迎えた第7サービスゲームでは、錦織のダブルフォールトもあり、相手にブレークチャンスを許す。それでもこの窮地を切り抜けると、その後は両翼から放つウイナーで自らリズムを作り、3ゲーム連取で一気に勝利へと駆け進んだ。

 試合が翌日順延となったとき、周囲は2年前のロンドンと今のパリを重ね合わせ、その精神的な影響なども危惧した。実際に試合後の会見では、「ボレッリというと、ウインブルドンでの3日がかりの試合が思い出されますが?」との質問が勝者に向けられる。

 果たして返ってきたのは、頭に疑問符を浮かべた錦織の、「はぁ......」という、どこか気の抜けた声。

「まったく覚えてないです」

 やや照れた笑いを浮かべつつ、彼は悪びれるふうもなく認めた。

 2年前に起きた3日がかりの試合は、錦織にとっては、とうの昔に自分の制御下を離れた過去だ。そんなことに、心を砕く必要などない。

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