2015.12.03

2015年総括。クルム伊達公子はどこに向かっているのか?

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki   photo by AFLO

 思えば今季は、涙の始まりだった……。

 1月の全豪オープン、シングルス初戦敗退後の会見。昨年末から負っていた股関節のケガの状態について問われたクルム伊達公子は、「すみません」と絶句すると両手で顔を覆い、しばらく、そのまま動かなかった。

今年9月で45歳になったクルム伊達公子「ケガをして1ヶ月半くらいは練習できないし、歩くこともできず。いったんは本当に、コートに立てないかなと思っていたんですが……」

 この当時のクルム伊達のランキングは101位。これは、グランドスラム本戦に出場できるボーダーラインの数字である。彼女は常々、「グランドスラムの予選から出ていくのは、自分の体力や年齢を考えると厳しい」と口にしていた。今後、今の地位を維持するのが困難になった場合……つまりはグランドスラムの本戦に出られなくなった場合は、どうするのか?

 そう問われた彼女は視線を落とし、ポツリポツリと言葉をしぼり出した。

「ここまでは、目の前にある状況とただ向き合った結果が、今、たまたまあるだけで……。その結果がなかったとき、予選に出ていたかというのは、そればかりは私にもわからないです」

 涙の会見から、約2ヶ月後――。

「久々に痛みがなくプレーできた」

 そう言って明るい笑顔を見せたのは、3月末のマイアミ・マスターズのころだった。2月から3月にかけての彼女は、従来の股関節とは別に左ひじ、そして右肩にも、寝るのも困難なほどの痛みを抱える毎日を過ごしていた。それでも痛みが薄れるに伴い、テニスが持つ戦略性や駆け引きの妙、そして何より勝負の緊迫感を楽しむ姿が、コート上に戻ってきた。