2014.06.23

フェデラーと互角。ウインブルドンに自信深めた錦織圭

  • 内田暁●文 text by Uchida Akatsuki photo by AFLO

「ウインブルドンと言えば、フェデラーですね。フェデラーが強いというイメージがあります」

 錦織圭がそう答えたのは、2年前のことだった。

 フェデラーのイメージと言えば、ウインブルドン......ではない。「ウインブルドンのイメージや印象は?」と尋ねた際の回答が、「フェデラー」だったのだ。常々、「フェデラーが憧(あこが)れであり、尊敬する選手」と公言していた錦織ではあるが、ウインブルドン7回の優勝を誇る芝の王者への畏敬の念は、かくも大きなものであった。

ウインブルドンへの意気込みを語る錦織圭 そのフェデラーと錦織は、ウインブルドンの前哨戦となるゲリー・ウェバー・オープン(ドイツ・ハレ)の準決勝で、初めて芝の上で相対した。これまで両者の対戦は3回あるが、コートの内訳はインドアハード、クレー(土)、そしてハードであった。勝率は、錦織の2勝1敗。唯一の敗戦は、球足が速いバーゼル大会(スイス)のインドアハードで喫したものだ。まだ、錦織が世界ランキング40位台後半だった、2年8カ月前の話である。

 このバーゼル大会でのフェデラー戦、そして錦織の現コーチであるマイケル・チャンという役者がそろった時、思い出されることがある。それは2011年末に、錦織とチャンが行なった対談での一幕。フェデラーに完敗を喫した衝撃を打ち明ける錦織に対し、チャンは険しい表情を見せ、重々しく次のような言葉を伝えた。

「君はバーゼルで、大きなミスを犯した。それは、フェデラーとの決勝を前にして、『フェデラーは僕の憧れだから、対戦できるのがすごく嬉しい』と言ったことだ。コートの外で尊敬するのは構わない。だが、ひとたびコートに立ったら、相手が誰であろうと、『お前は、俺の優勝の邪魔をする存在だ』というメンタリティでなくてはいけない。過去の実績などは、これから起きる試合には関係のないことだ」

 やがて、ふたりが師弟としてトップ10入りを果たすことなどは、まだ当人たちも知る由(よし)もない日のことである。

 そのチャンが見守る中、先週のハレ大会で錦織は、フェデラーと対戦した。それも相手の城である「芝のコート」での戦いである。

 2年前の対談での内容を踏まえ、今回チャンから授けられた、特別なアドバイスはあっただろうか?