同世代・神尾米が語る「43歳になったクルム伊達」の魅力
毎年6月末からイギリスのロンドンで開催されている「ウインブルドン選手権」。世界中のテニスファンが愛するこの伝統ある大会に、今年もクルム伊達公子はシングルスとダブルス、両方に参戦した。1990年代、そのクルム伊達とともに日本女子テニス界を盛り上げた神尾米氏の目には、大会最年長となる43歳のプレイはどのように映ったのか。
ウインブルドンでの大舞台でも楽しそうにプレイするクルム伊達公子1990年代と比べて「何もかもが速くなった」
私が現役だった1990年代と比べて、現在の女子テニスは大きく変わりました。道具の進化もあると思いますが、すべてにおいてスピードがどんどん上がっています。ボールのスピードもそうですし、試合の展開だったり、ポイントの取り方も速くなりました。昔の自分の試合の映像を見ても、「なんて遅いんだ」って感じるくらい(笑)。
以前のテニスというのは、まずはクロスでラリーをつなぎ、チャンスを待つ......というのが普通でした。でも今は、チャンスを待っていたらダメですね。自分から攻めてチャンスを作っていかないと、勝てなくなっていると思います。同時に、テニスそのものが潔(いさぎよ)くなっているとも感じます。今の選手のほうが、勝負しに行く勇気がある。逆に言えば、勝負に行く根性がないと、トップに行けないという印象です。
伊達さんも1990年代のころは、クロスを主体にしたテニスでした。左右から鋭角に外に抜けていくクロスの切れ味が鋭く、特にバックのショットがすごかった。
でも今は、早めにストレートに展開していきます。ネットに出ていくタイミングも早いし、その決断をする勇気がすごい! それにボレーの精度も、ものすごく上がっています。そこは、以前と大きく変わったところだと思います。スマッシュも力強くなりましたよね。それは、ダブルスをやっている効果もあると思います。ですから、年齢は重ねていますが、私から見ると衰えたところはないです。もちろん、若いときのほうが持久力や回復力はあったでしょうが、技術は錆(さ)びないし、むしろ上がっているのではと思います。
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