明大のNo.8として3度の大学日本一、高橋一聡はなぜ東大へ向かったのか 対抗戦Aグループ復帰を目指す静かな闘い (2ページ目)
「伝統ある対抗戦の5大学のなかで東大だけがAに上がれずにいる......僕が2012年にFWコーチとして明治に戻った時、秩父宮で試合をしても満員にならない状況に愕然としました。僕らの時代は取材陣の数もすごかったし、寮からグラウンドへ出るだけでもファンに囲まれて前に進めなかった。これってなんだろうと考えた時、明治や早稲田、慶應が対抗戦で優勝するよりも、東大がAに上がって上位校を倒したほうがニュースになるんじゃないかと思いました。
その日から地味に動き始めたんです。明治学院大、学習院大でも指導しましたが、その間、麻布高校と開成高校のラグビー部を3年、指導しているんです。この子たちはやがて東大へ行く可能性がある、そもそもこの子たちの親御さんは東大のOBかもしれない......だとすれば指導者としての信頼を得れば、東大ラグビー部につながるかもしれないとも考えました。
あるいは東大と同じBグループで3年連続全敗だった学習院を指導して、もし東大に勝てばそれを東大に評価してもらえるかもしれない......そんなことをいろいろと考えながら、自分の存在を地味に東大へアピールし続けました(笑)」
【創造力を身につけてほしい】
そして2024年、一聡は東大ラグビー部のヘッドコーチに就任する。実際、東大で一聡が目指したラグビーとは何だったのだろう。
「僕、やりたいラグビーというものはどのチームでもないんです。やりたいラグビーではなく、どんなラグビーができるのかを考える。選手たちがどんなラグビーを求めているのか。そして、そのチームにはどんなリソースがあるのか。そこを理解したうえで、どんなラグビーができるかを探っていくスタートでした」
一聡はまず、選手たちの考える力を刺激しようとした。それも、ラグビーを考えるのではなく、身体の使い方を考える。東大の学生ならフィジカルの能力やラグビーの経験値は高くなくとも、考える能力は高いはずだ。実際、ラグビー強豪校との差を埋めるために、東大生であり、勉強ができて考える能力が高い、ということは役に立つものなのだろうか。
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