ラグビー日本代表が掲げる「超速」は世界に通用したのか 新生エディージャパンの船出は予想以上に... (3ページ目)
【対戦相手のキャプテンからアドバイス】
2023年ワールドカップで日本代表メンバーはベテランが多く選出され、再任したジョーンズHCは「若手を育成しなければならない」と語っていた。そのため、今夏の5試合では若手を積極的に起用し、イタリア代表戦でも先発15人中10人はひとケタ台のキャップ数だった。
「(87キャップ目の)リーチを除くと、ほかの選手のキャップ数を全部合わせてもトータルで120くらいしかない。成長のプロセスだと、今はまだまだ幼稚園生のようなチーム。才能のある選手はたくさんいるが、まだ経験値は足らない。経験、知識を蓄積し、連携を深めていくことが大事です。最低でもそれぞれがテストマッチで戦えるレベルの基準となる20キャップを得なければなりません」
まだ若手の経験が足らない現状に、ジョーンズHCは理解を求めた。
若手をあまり育成してこなかったジェイミー・ジョセフ体制時代の「ツケ」がまわってきているのは事実である。しかし、ホームでテストマッチ3連敗という現実から目を背けることはできない。まずは勝利を手にすることで、選手が自信をつけて成長する場合もあろう。
一方、日本代表と対戦した相手は「超速ラグビー」をどう受け止めたのか。イタリア代表のキャプテンFLミケーレ・ラマーロはこう語った。
「私たちも2~3年前、(日本代表のように)とても速いプレーをしたかった。だが、ビッグマッチでは速いプレーをしすぎて(ボールを)失うこともある。だから、正しい瞬間に、正しくプレーすることのバランスを見つける必要がある。それが非常に重要です」
どのエリアで、どのタイミングや時間帯で、超速ラグビーを見せるのか──。日本代表が世界と戦ううえで、それは今後の大きなテーマになりそうだ。
8月末から日本代表はパシフィックネーションズカップに臨む。カナダ代表、アメリカ代表と予選プールで対戦し、順位決定戦ではフィジー代表、トンガ代表、サモア代表と激突する可能性がある。
順位決定戦は日本で行なわれるだけに(準決勝=東京・秩父宮、決勝=大阪・花園)、ぜひとも全勝で優勝を手にしたいところだろう。このまま若手の成長を促(うなが)しながら超速ラグビーを貫き通すのか、それとも戦術やメンバーに少し修正を加えるのか──。ジョーンズHCの手腕の見せどころとなりそうだ。
著者プロフィール
斉藤健仁 (さいとう・けんじ)
スポーツライター。 1975年4月27日生まれ、千葉県柏市育ち。2000年からラグビーとサッカーを中心に取材・執筆。ラグビーW杯は2003年から5回連続取材中。主な著書に『ラグビー『観戦力』が高まる』『世界のサッカーエンブレム完全解読ブック』など多数。
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