ラグビー土佐誠の不屈のラグビー人生。大学時代のチームメイトの不祥事、開頭手術からの復帰......それでも前を向く (3ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by 日刊スポーツ/アフロ

今季にかける思い

 また、オックスフォード大学留学で学んだ英語を活かすために通信制の大学で教職に必須な科目を履修し、英語の教員免許を取得した。そうした活動や術後、ラグビーを続けていくなかで、土佐のラグビー観にも変化が見られた。

「前は、単純に相手よりもどのくらい強いか、どのくらいのスコアで勝てるのか、強いか弱いかだけを考えてプレーしていたんですけど、引退を覚悟しながら自分のラグビー人生を見つめ直していくなかで、自分がどれだけ成長できるのか、自分がプレーする意義を考えてラグビーを楽しむようになりました」

 勝ち負けのみの思考から今は自分の成長やチームに何かしらの財産を残すことを考えながらプレーしているが、そのベースが三菱重工相模原ダイナボアーズになる。土佐は2017年に加入したが、その頃はトップリーグ2部にあるチームで、現在とはかなり状況が違った。

「僕は、今年で5年目なんですけど、加入した当時はトップリーグで12年間1部に上がれていないチームでした。毎年、今年は入れ替え戦に勝てるかなぁみたいな感じで、自分たちを信じきれていなかった。でも、今は力のある選手や経験のある選手が加入してくれてチームの選手層が分厚くなり、本当に成長が著しいチームになりました」

 チームは相模原の地域の人にしっかりと支えられている。コロナ禍前のクラブイベントには多くのファンが集まり、大盛況だった。クラブのエンブレムの猪は、大人気マンガの『鬼滅の刃』に登場するキャラクターである嘴平伊之助(はしびら・いのすけ)に通じるところがあり、人気が膨らみそうだ。実際、昨年のハロウィンでは伊之助のかぶりものをした選手もいたという。

「エンブレムは、虎とか龍がカッコいいですし、うちは猪なのでどうかなって思っていたんですが、鬼滅の影響で子どもたちに興味を持ってもらえるのはうれしいですね」

 すでにリーグワンのリーグ戦が開幕しているが、ダイナボアーズは現在、開幕5連勝と好調だ。このまま勝ち進んでディビジョン2で優勝し、その先の入れ替え戦に勝てばディビジョン1への昇格が決定する。

「5年前の勝てるかなっていう自信なさげな空気はもうないですね。今年中に絶対に1部に上がってやるという強い気持ちでみんなプレーしています。実際、強くなっていますし、危険なチームになってきている。自分は、そこで最高のパフォーマンスをするだけです」

 波乱万丈のラグビー人生に華を添える瞬間が、もうすぐやってきそうだ。

FMヨコハマ『日立システムズエンジニアリングサービス LANDMARK SPORTS HEROES

毎週日曜日 15:30〜16:00

スポーツジャーナリスト・佐藤俊とモリタニブンペイが、毎回、旬なアスリートにインタビューするスポーツドキュメンタリー。
強みは機動力と取材力。長年、野球、サッカー、バスケットボール、陸上、水泳、卓球など幅広く取材を続けてきた二人のノウハウと人脈を生かし、スポーツの本質に迫ります。
ケガや挫折、さまざまな苦難をものともせず挑戦を続け、夢を追い続けるスポーツヒーローの姿を通じて、リスナーの皆さんに元気と勇気をお届けします。

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