五郎丸歩「日本代表への忠誠心はなかった」。若い頃の正直な思い (4ページ目)

  • 斉藤健仁●取材・文・撮影 text & photo by Saito Kenji

 現役生活を振り返ると、海外に行って成功したかといえば、まぁ失敗じゃないですか(笑)。でも今は、クレルモンのFB松島(幸太朗)やハイランダーズのNo.8(ナンバーエイト)姫野(和樹)が個として成功し、大きなステップを踏んでくれました。誰かが一歩踏み出さないと、それを越えようとする選手は出てこないので、彼らには心の底から敬意をはらいたいと思います。

---- 五郎丸さんが日本代表として、ラグビー選手として残せたものは?

「『日本代表にどうして外国人選手がいるのか?』という、ラグビーが持つ多様性の部分をしっかりと世の中に発信できたかなとは思います。日本代表に外国人選手がいることに対して、世の中から文句が出なくなりました。この大きな功績は残せたかと思っています。

 2012年から日本代表にフルでコミットしていくなかで、ラグビーの独特な文化をどうやったら理解してもらえるのか、ずっと考えていました。我々日本人選手は外国人選手に対して尊敬の念をものすごく持っていましたが、その情報を発信するタイミングはビッグゲーム後でないと世間に伝わらないなと感じていて......。

 だからこそ、南アフリカ代表戦が終わったあと、Twitterでつぶやきました。『ラグビーが注目されてる今だからこそ日本代表にいる外国人選手にもスポットを。彼らは母国の代表より日本を選び日本のために戦っている最高の仲間だ。国籍は違うが日本を背負っている。これがラグビーだ。』と。

◆ラグビー福岡堅樹、初の日本一で引退。感謝の言葉と医師としての目標も語った>>

 この言葉は、あの瞬間に感じたことではなくて、ずっと考えていたことでした。自分が日本代表にコミットするにつれて、だんだん外国人選手に対する思いがポジティブになり、母国の代表権を放棄してまで日本代表として一緒に戦う姿勢に尊敬の念が生まれ、仲間になっていった。この情報発信は日本人で活躍した選手しか発信できない......という意味も込めて、あのタイミングに出したんです」

(後編につづく)


【profile】
五郎丸歩(ごろうまる・あゆむ)
1986年3月1日生まれ、福岡県福岡市出身。3歳からラグビーを始め、佐賀工業高校時代には3年連続で花園に出場。早稲田大学では1年時よりレギュラーとして活躍し、大学選手権優勝も経験する。2008年、ヤマハ発動機ジュビロに入団。2016年はフランスのトゥーロンやオーストラリアのレッズでもプレーし、2021年シーズンで現役を引退。日本代表通算キャップ57。日本代表テストマッチ最多得点記録保持者。ポジション=FB。185cm、100kg。

4 / 4

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る