ラグビーW杯に不可欠。ジョセフHCが手塩にかけた司令塔ついに開花

  • 斉藤健仁●取材・文・撮影 text & photo by Saito Kenji

 9月のワールドカップに向けて日本代表候補を中心に編成されたチーム「ウルフパック」が4月27日、東京・秩父宮ラグビー場でウェスタン・フォースと対戦した。

 ウェスタン・フォースは、2017年までスーパーラグビーに参戦していたオーストラリアのチーム。サモア代表歴のある選手やフィジー代表としてリオ五輪で金メダルに輝いた選手も在籍しており、決して弱いチームではない。

プレースキック9本すべてを決めた松田力也プレースキック9本すべてを決めた松田力也 この試合、司令塔であるSO(スタンドオフ)を任されたのは、24歳の松田力也だった。

「久しぶりの10番で、手応えを感じることができた。いい流れの時に、コントロールもできた」

 松田は9本のプレースキックをすべて決めて、51−38の勝利に大きく貢献。ワールドカップ出場へのアピールにも成功した。

 ウルフパックの過去3戦でSOを務めていたのは、オールブラックスのSOだったトニー・ブラウン・コーチが「日本で一番の10番」と太鼓判を押す田村優だった。2015年のワールドカップ後にジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)が就任して以降、田村はすべての選手のなかで試合出場時間が一番長く、つまりは最も信頼されている「不動のSO」である。

 しかし、パスやキック、ランとすべてにおいて試合のタクトを握るSOは、勝敗のカギを握るポジションだけに、ケガなどのリスクを考えると田村ひとりでは到底戦えない。そんななか、2年前のオーストラリア代表戦や昨秋のロシア代表戦で10番として先発させ、ジョセフHCが手塩にかけて育ててきたのが松田だ。

 ユニチカの選手だった父の影響で6歳からラグビーを始めた松田は、伏見工業(現・京都工学院)時代はFB(フルバック)として鳴らし、帝京大では1年から10番を背負って大学選手権5〜8連覇に貢献した。ただ、大学4年時の日本代表デビュー戦はFBだったように、181cm・92kgの体躯を生かしたタックルは強く、ラン能力にも長けている。

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